内容説明
「力強く男らしい文体」「優美な女らしいことば」…こうした発想・表現の枠組みとことばや文学はどのような関係をもつのか。「性的なるもの」をめぐる制度的言説を平安朝と近現代文学を軸に多角的に論じる。「女/男」と言説の制度。
目次
1 脱「女流文学」論のためのデッサン
2 『とりかへばや』の性愛と性自認―セクシュアリティの物語
3 女の言説・男の言説―「女流文学」をこえて・座談会
4 『源氏物語』の遊びわざ―宮廷文化と性差の言説
5 逸脱する「父」―森茉莉『甘い蜜の部屋』
6 『更級日記』の「橋」「渡り」をめぐって―境界へのまなざし
7 「教科書」の中の女と男―井上ひさし『ナイン』を例として
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あなた
3
鼎談に関礼子を入れてるのはいいが、ジェンダー・フェミニズムをめぐってかなりちぐはぐな対談となっており、めいめいが「困惑」しつつも公約数を見出そうと奮闘しているようにも思える。そもそも中世文学研究と近代文学研究の「場」のすりあわせ自体、難しい上に、ジェンダー論をからませるとさらにことはこじれる。初収の菅聡子『甘い蜜の部屋』論は読む価値あり。ただ単に「美的」なるものとして浮遊してきた森茉莉のテクストを父権制下を逸脱した浮遊する女のテクストとして位置づけている。さすが菅先生だと思いました2010/08/26