内容説明
本書は、科学史・哲学史・観念史・技術史・美術史等の広範な一次文献を精査し、近代初期における自然観・技術観の転機を背景に、科学革命・哲蒙主義に至る近代思想史全体の再構成を目指した画期的研究である。
目次
第1章 16世紀における機械的技術と哲学(技術の新しい評価―パリッシ、ノーマン、ビーベス、ラブレー、ギルバート卿;技術的論考、古典の翻訳、注釈;1400年代の芸術家と実験家;レオナルド・ダ・ヴィンチ;ルネサンスの職人、建築家、科学者;1500年代の「機械に関する著作」―ビリングッチョ、アグリコラ、グイドバルド、ラメッリ、ロリーニ)
第2章 科学的進歩の理念(科学革命;1500年代の技師たちにおける知識の「進歩」の理念;科学の進歩と近代人の優越性―ボダン、ル・ロワ、ブルーノ、ベイコン;古代派と近代派の論争〔新旧論争〕;協力による進歩―アカデミー;認識主体としての人間―パスカル)
第3章 1600年代における哲学・技術・技術誌(トマゾ・カンパネッラ;デカルト;メルセンヌとガッサンディ;ガリレオ;技術誌の計画;イギリスのベイコン主義者たちとロバート・ボイル;アルシュテートとライプニッツ;啓蒙主義という遺産―ダランベールとディドロ)
付録一(自然―技術の関係と世界という機械;フランシス・ベイコンにおける科学の真理と有用性;新科学とプロメテウスの象徴)
感想・レビュー
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roughfractus02
9
本書は、機械は自然の模倣であり、自然が自ら動くのに対し、機械はそうでないとして奴隷同様に道具として機械を捉えたアリストテレスの考えから発した哲学の技術への偏見に対し、既成哲学は作用因と本質を混同していると批判し、技術と自然の同等性を主張したベイコン以後の近代の系譜を扱う。コイレ『ガリレオ研究』やハイデガーの技術論にアリストテレス主義の影を見る著者は、17世紀の機械技術の革新と工学的知の進歩が哲学に大きな影響を与えた点を強調する。が、機械自ら動き自ら考えようとする現代では、本書を再検討する必要もありそうだ。2019/09/19