内容説明
「…もうどこにも行かないよ」叔父は答えなかった。暫くすると、目を覆っている手の隙間から涙が伝い落ちていった。叔父の喉仏が上下した。泣くことも忘れたと言っていた叔父が、声もなく泣いていた。嬉し涙などではないことはわかっていた。…叔父は静かに自分を責めているのだ。「…辛い思いをさせるね。…でも、側にいたいんだ」目を覆っている叔父の手をそっと外した。叔父は濡れた瞳を俺から背けた。「…何を言っているのか…わかっているのか」「…あゝ。…拒まれても側にいるよ。今は絶対にここにいなければならないってことがわかったんだ」叔父は顔をしかめ、俺を見つめた。