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出版社内容情報
気鋭の写真家が綴る、親子という他人。
千葉雅也氏(哲学者、作家)、小田原のどか氏(彫刻家、評論家)、
滝口悠生氏(作家)、激賞! 著者初の文芸書、衝撃のデビュー作。
その後のことを知っている私には、父のことを「失踪を繰り返
す父」と呼ぶのはどうしても過剰なことに思える。私がそう思
うのは、「父がやっていることなんてそんなにたいしたことで
はないんです」と謙遜するような気持ちもあるが、本当のとこ
ろは、「父という人は、『失踪を繰り返す』という言葉で片づけ
てしまえるような人ではないのだ」と自慢げに言いたい気持ち
のほうが強くある。――(本文より)
『father』にて「失踪する父」とされた男は、その後は失踪を止めた。
不在の父を撮影する写真家として知られるようになった著者に、
「いる父」と向き合うことで何が浮かび上がってくるのか。
時に不気味に、時に息苦しく、時にユーモラスに
目の前に現れる親子の姿をファインダーとテキストを通して描く、
ドキュメンタリーノベル。
内容説明
時に不気味に、時に息苦しく、時にユーモラスに目の前に現れる親子の姿をファインダーとテキストを通して描く、ドキュメンタリーノベル。
著者等紹介
金川晋吾[カナガワシンゴ]
写真家。1981年京都府生まれ。神戸大学発達科学部人間発達科学科卒業。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。三木淳賞、さがみはら写真新人奨励賞、受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
20
著者にとってこの本を書くこと、父親の写真を撮ることはどんな意味があったのか。そしてそれを公開すること、それを読むことは読者のわたしになんの意味があるのか、そんなことをずっと考えながら読みました。残念ながら答えは得られなかった。答えがあるとするならば、の話ですが。2023/09/13
kuukazoo
14
過去失踪を繰り返していた父親に対し家族は怒りも責めも恨みもせず理由も聞かず、といって無関心なのでもなく穏やかにごく普通に接していた。たまたまnegative capability高めな家族だったのか。本心は分からないがそれを外に出さなかっただけかもしれないし、父親も失踪の理由やどこで何をしてたかを語ることはない。失踪はしなくなったが仕事をしなくなった父親への不安が、父親を写真に撮り続けることで変化したり、TVのドキュメンタリー撮影で撮られることに違和感を覚えたり、写真を通した人や関係への考察が面白かった。2023/06/20
msykst
9
制作の動機と逡巡と思弁を延々と語られる事には辟易することの方が多いのだけど、この本には不思議と引き込まれてしまった。防衛的であるように読めなくも無いのだが、そこに卑近さがない上に、普遍的な写真論として無理なく昇華しているのが良い。きれいに三幕に分けてる構成だったり、最近の思想的トピックをそうと言わずにめちゃくちゃ的確に換言してたり、文章もスマートだと思った。2023/04/29
きゅー
6
幾度も失踪を繰り返す父と、その父の写真を撮り続ける息子のドキュメンタリー。失踪の理由は深堀りされず、それはそのままとして了解される稀有な関係が眩しい。一方で息子である著者の、誰かを被写体として写真を撮ることの独善性には共感できない。写真を撮られたくない第三者の女性に自説を押し付け無理に撮影をする彼は、父親が抱いているかもしれない写真を撮られることの辛さにも思いを馳せられない。彼は写真に意味をもたせるために、父が自死しようとする場面をセットアップして撮影するということまでしているのに驚愕した。2024/05/24
チェアー
5
これは一体何だったんだろう?この写真、写真集は何だったんだろう?この本を読み終えた後、これまでより大きな謎として浮上している、それはそもそも写真とか芸術とかそういったものは何なのだろうという問いにつながるのかもしれない。 NHKの撮影について書かれた文章はすごくよかった。 2023/06/26