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内容説明
薔薇戦争による混乱を解決した先王の跡を継ぎ、テューダー朝の第二代国王として即位したヘンリー八世。華やかなルネサンス君主であるはずの彼の治世から決して血なまぐさい印象が拭えないのはなぜなのか。英国王室きっての怪人の生涯に迫った本格評伝。
目次
プロローグ テューダー王朝の幕開け
序章 王子時代―「冬の王」の膝下で
第1章 フランス遠征―Make England Great Again
第2章 絢爛たる平和と枢機卿ウルジー
第3章 離婚問題―国王陛下の重大事案
第4章 変貌する王国
第5章 戦火再び
第6章 晩年と死
著者等紹介
陶山昇平[スヤマショウヘイ]
1978年生まれ。福岡県太宰府市出身。東京大学法学部卒業。ロンドン大学(UCL)、オックスフォード大学大学院(MSc)修了。現在、総務省審査官(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
118
本著の作家は、ヘンリー七世を描いた『冬の王』の訳者。8世は虎視眈々と王位を狙った訳ではない。『冬の王』で七世を四世に、そして八世をハル王子(五世)に例えていたが、確かにその側面がある。七世は王家継承のために政敵を潰し財をなし内政に腐心した。一方、八世は外交にも錬金術にも長けたウルジー、クロムウォルらの、肉屋、鍛冶屋出身の才を重用し、学者肌のクランマーを最後まで頼る。貴族は策を練るからだろうか。サフォークの図太さも際立つ。煉獄の利用を許さなかったルター、真摯なエラスムス。モアは智に働きすぎ角をたてたか。2022/02/24
trazom
103
シェイクスピアの「ヘンリー八世」は、アン・ブーリンまでしか描かれず、主人公よりも、ウルジー枢機卿たち取り巻きの人たちが巡らす権謀の印象ばかりが強いのだが、本書では、六人の妻、四人のトマス(ウルジー、モア、クロムウェル、クランマー)、フランス・スコットランド・神聖ローマ帝国・ローマ教皇庁との関係など、この大君主の生涯が網羅的に描かれている。冒頭はトランプ大統領の話題から始まるが、ヘンリー八世の肖像画がトランプ大統領に似て見えてくる。「暴君かカリスマか」…二人とも、評価を迷う必要なんかないように思うのだが…。2022/02/13
パトラッシュ
79
英国史上最もやりたい放題にやった王とのイメージからトランプに似ているとされたヘンリー八世だが、伝記を読むと信長と秀吉を合わせたような人物と思えた。イングランドを欧州の大国にのし上げ、宗教改革を断行しカトリックから独立しながら忠臣を相次ぎ粛清したのは信長に重なる。一方で国威発揚のため海外遠征を行い、世継ぎの男子を望んで多くの女をわがものとした点は秀吉そっくりだ。軍事や政治の才で天下を制した人は、半面で深刻な性格的欠陥故に周囲に畏怖されるからこそトランプを含めた面々は、今もカリスマ的人気が高いのかもしれない。2021/07/01
k5
63
『薔薇戦争』の陶山さんによるヘンリー八世の伝記本。『ウルフ・ホール』愛好家は絶対読むべきです。小説の方だと、ヨーロッパ列強や教皇庁との関わり合いがつかみにくかったり、たいていは悲惨な目に遭う王妃たちの来歴を読み取るのが難しかったりするのですが、そのあたりがするするっと頭に入ってきます。しかし、総務官僚やりながらこれだけの本を書くのがそもそも凄いんですが、だんだん語りが上手くなっているようで、もっと色々書いてもらいたいです。2022/01/16
帽子を編みます
56
読みやすい一冊です。マンテル『ウルフ・ホール』を読んで時代背景を知りたい方は是非読むべきです。副題の答えは、私には暴君です。若い頃の彼は、理想の「万能人」の片鱗を見せていました。語学に堪能、神学にも見識を持ち、楽才にも恵まれていました。しかしイングランドの絶対権威者であることに慣れてからは衝動的な振舞いが多く、多くの人を非業の死に追いやっています。ウルジーの業績、アン・ブーリンとの関係、スティーヴン・ガードナーの暗躍、などは参考になります。クロムウェルの死の原因については、疑問を解決出来ませんでした。2023/06/28