内容説明
殴る父と耐える母、ハラスメントの横行、エロ情報の氾濫、あからさまな賃金格差、性犯罪におびえなければならない日常…。かつて1ミリも疑ったことがなかった「男女平等」は、すべてまちがいだったのか?貧困、精神疾患、自殺未遂など、いくつもの困難を生き抜いてきた彼女がたどり着いた先にあったもの。もう黙ることはやめよう。体当たりでつかんだフェミニズムの物語。
目次
第1部(父は王様、母は従順な家来;脂肪よりも筋肉が欲しい;母のようにはならない;この国の男たちは狂っているのかもしれない;平坦な地獄が待っているだけ ほか)
第2部(寂しいから一緒にいるだけ;最低で最悪のカップル;世界で一番情けない生き物;あなたには生活保護がいい;一人で暮らしているだけなのに ほか)
著者等紹介
小林エリコ[コバヤシエリコ]
1977年生まれ。短大卒業後、エロ漫画雑誌の編集に携わるも自殺を図り退職、のちに精神障害者手帳を取得。現在は通院を続けながら、NPO法人で事務員として働く。ミニコミ「精神病新聞」の発行終了後は、フリーペーパー「エリコ新聞」の刊行を続けている。また、漫画家としても活動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
45
読んでいてこれほど辛い本も久しぶりです。彼女が幼少のころから担がされてきた重荷が私の上にものしかかりました。読書家であることが伝わってくる表現。男性への救いがたい不信。最近フェミニズムは貧しい女性を救えないという痛烈な怒りがこもった本を読みましたが、彼女の場合女性であることの前に一人の人間であることも否定されてきたようで、周囲の人へ怒りを覚えました。そして彼女がこの辛い言葉を紡ぐことで強さを手に入れ、自分の脚で立てるのなら、重荷が下せるなら、どんどん語り続けてほしいと思いました。Go, Girl!2022/01/22
ネギっ子gen
40
数々の困難をサバイブした著者が、体当たりで摑んだフェミニズムを知る以前を回想する。<でこぼこの社会を平坦にし、強いものと弱いものが肩を並べる社会。そこに到達するために、私たちは学び続けよう。学びは学校の中にあるのではない。フェミニズムは生活の中にある/この本には、私が女として生きてきた痛みや悲しみが書かれている。それはどこかの誰かとリンクする痛みだ。この本の中のどこかに、自分の姿を見つけてくれたら、それは私にとって、最上の喜びだ。あなたと苦労を分かち合えることは、私は一人ではないということなのだから>。⇒2022/01/07
itokake
14
著者の半自伝。『この地獄を生きるのだ』と一部オーバーラップする。『この地獄』はメンタル中心だったが、こちらはフェミニズムの視点。元カレのよっちゃんがクズすぎ…。だめんずウォーカーに出てた?と思うくらいの人物。「惰性」の意味すら知らないくせに、男尊女卑的ふるまいは知っている。だから平気で彼女宅に居座り、あたりまえのように夕食を食べていく。社会に網の目のように張り巡らされている男尊女卑のワナ。私にもよっちゃんの縮小版のような元カレがいたし、フェミニズムを知らない頃があった。そんな自戒を込めて読んだ。2022/04/11
二人娘の父
9
冒頭から続く著者の悲しく辛いナラティブ。最終盤、それらが「フェミニズム」を獲得することで急速に理解され、自らの経験として消化され前を向く力に昇華しつつあるところで本書は終了する。正直もう少し違った編集の仕方もあったようにも思うが、これが著者のリアルである以上、彼是言うまい。しかし登場する男がことごくスレギ野郎ばかりでうんざりする。それは男性である自分への嫌悪になるから。フェミニズムは「どっちが辛いか選手権」ではなく、互いができるだけ平らな道を歩けるようにするための努力なのだとつくづく感じさせられる。2021/08/02
カモメ
5
筆者が女性であるからこそ経験してきたあらゆる困難の物語。理不尽で不条理で気分が悪くなるようなものもあり、読んでいながら無力感や怒りが湧き上がってくる。そして最後に、今までの苦労や不幸が全て「女である」ことに凝縮されているのだと気づく。学校では男女平等の前にまず、いかに不平等かを学ばなければいけないと感じる。彼女たちは男性の目線を通して生きてきたけど、「男性の目線」とは何なのか、いかにして生まれるのか。そして、女だから、と諦めたくない。そんな事を考えさせられる。自分の人生とは何か、向き合うことができました。2022/01/20