出版社内容情報
写真は世界の断片を収集し、世界を模写する。多くの写真映像が氾濫する今日、写真について語ることは世界について語ることだ。
本書は、絵画や文学との違いを明確にしつつ、写真が「現実と創造力の交差」という現代文化の中心テーマをとく鍵であることを指摘する。アッジェ、アーバスらの作品世界を通して「写真時代」の文化構造を読み解く最もラディカルな批評家の本格的写真文化論。
プラトンの洞くつで
写真で見る暗いアメリカ
メランコリーな対象
視覚のヒロイズム
写真の四福音書
映像世界
引用の冊子
訳者あとがき
スーザン・ソンタグ[スーザンソンタグ]
著・文・その他
近藤耕人[コンドウ コウジン]
翻訳
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
26
書かれてから半世紀、その後の技術革新で時代に合わなくなった部分と同じくらい、今の時代を予言しているかのような部分もあり、いまだ古びていない。とりわけその略奪的な暴力性、不介入性の指摘。D.アーバスが写真はヤクザなものと言ったそうだが、今の我々はそのヤクザ性さえ忘れてしまっていないだろうか。写真はイメージと物の、複写と原本の境目をますます曖昧にし、現実の理解を非プラトン化し、人は洞窟のなかでますます迷い続けている。写真の引用が一切なく、知らない写真家ばかりで、検索しながら読んだので時間がかかってしまった。2024/06/14
蛸
12
写真の発明が人間の知覚へ如何に大きな影響を及ぼしたか。顕微鏡写真や大空からの俯瞰写真は文字通り人間の、世界に対する知覚を推し拡げていく(「視覚のヒロイズム」)。人間は写真を通して世界を理解するようになる。写真は世界の断片であり、引用であるが、人々はそれを所有することで擬似的に世界を所有する。収録された全ての文章に関して、その構成はとても緩やか(起承転結がない)。写真の持つ特性に関する鋭い指摘が連続するので、その意味で、どこから読んでも楽しめる一冊となっている。2022/01/21
Francis
9
昨日終了した猫町俱楽部の読書会の課題本。すみません、読書会の前日に読了していながら書評書いてませんでした。だって難しくてわけわかんなかったんですよ。参加者も読書会に二回参加するためにもう一度読み直したけど、それでも分かりにくい、と言う評価が多かったです。元々ソンタグは哲学を学んだ人だし、「写真」をネタに哲学を語っているのが本書と言う事なのだと思う。読書会時代は盛り上がったのだが、それは分からないなりに自分が写真についてどう思うか、どういうエピソードがあるかを語ったから。何だか読書会レビューになってるなあ。2021/06/24
つまみ食い
3
「道徳的」な意図を持った写真がその文脈を剥ぎ取られ流通していくこと、どんな目的であれ写真を撮ること自体に埋め込まれた他者への侵犯、写真がなんでも美化してしまうこと…など様々な論点から写真を論じる。「人びとを撮影するということは、彼らを自分では決して見ることができないふうに見ることによって、また自分では決してもつこのない知識を彼らについてもつことによって、彼らを犯すことである。それは人びとを、象徴的に所有できるような対象物に変えてしまう」として「ソフトな殺人」(24)と写真を評したあたりに大きなテーマがある2023/03/22
猫町俱楽部
2
https://nekomachi-club.com/events/9e5253e3290b2021/05/21
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