内容説明
写真は単なる記録媒体を超え、あらゆる価値を貯えこんだアートとして、表現の幅を広げている。イメージを精緻に構成したタブロー写真。建築や風景を超然と高度な画質で写し取るデッドパン写真。凡庸な事物を視覚に訴える被写体に変容させる表現があれば、日常のスナップのような写真から深い感情が際立ってくる私写真もある。世界の証言としての写真、ポストモダニズム的写真、その先の新世代の表現まで…。世界の現代アーティストによる作品約250点を収め、歴史的にも美術的にも正しい解釈をあたえる無類の写真評論。
目次
序章
1章 これがアートであるならば
2章 昔々
3章 デッドパン
4章 重要なものとつまらないもの
5章 ライフ
6章 歴史の瞬間
7章 再生と再編
8章 フィジカル、マテリアル
著者等紹介
コットン,シャーロット[コットン,シャーロット] [Cotton,Charlotte]
学芸員、評論家。ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)にてアネンバーグ財団写真部門を統括、ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリー企画主任、イギリス国立メディア博物館のクリエイティブディレクター、ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)の写真部門キュレーターなどを歴任。現代写真に関わる数多くの展覧会を企画(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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MO
9
めちゃ良書。写真を現代のアート方向から知りたい人は必読。90年、00年代以降の写真は確かに分かりづらかった。ティルマンズとか活躍しているけど???だったし、グルスキーの高評価も説明してくれる。全体軽めだが参照写真がちゃんとリンクしているので親切。八つのカテゴリーもいい構成。現代美術はこちらから学んで歩み寄らなければ分かり得ない。それが写真分野にも及んでいるのだ。私写真のところではこの分野は批評することが作者の人生批判に繋がりやすいので批評されにくいとある。2023/01/04
denden_fish
2
コンテンポラリーアートとしての写真の諸相を、8つのカテゴリーに基づいて俯瞰した、一種の教科書。論述はあくまで写真家たちの実作品の解説を通じて行われており、250点近い図版(全編カラー印刷)が掲載された眺めは壮観で、写真集としても愉しく見ることができる。いささか教条主義的ではあり、写真の多義性、曖昧性を安易に隠喩や寓意の図式に還元してしまう姿勢が目につきはするが、総じて現代写真を手際よく、平明に紹介した書物としてお薦めしたい。個人的には、私写真を論じた第5章がスリリングだった。2016/06/16
さな
1
アート写真について知りたくて購入。大量の図版と著者の解説、カテゴライズで、観賞の仕方とかこの写真のどこに魅力を感じるのかとか少し理解できたと思う。楽しく読んだ。2020/02/24
しゃんぷーしょく
1
説明が豊富でいいんだろうけれど、正直長く感じたので斜め読み。ある作品を生み出すために、ありのままの姿を撮る芸術家もいれば、ある状況や場面をそれっぽく見えるように作る芸術家もいる。また他の形態で作られた芸術を記録する際にも写真が使われる。ある意味写真は微妙な位置にあると思った。2018/08/04
Atsumi_SAKURADA
1
写真という表現が生み出す現代における価値を辿った評論集です。カラー刷りで表紙を含め245点の写真が、出典はもちろん、批評による位置づけとともに掲載されており、「現代写真」という表現世界をカタログのように概観できます。ごく単純化して、写真に見えている以上のものをいかに雄弁にしかし必要十分に語るかというのが、ここでの(作家を含む)批評家の遊戯なのだとしたら、いったい「駄作」はどうやって決まるのだろう…?2017/06/22