われらはみな、アイヒマンの息子

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  • サイズ B6判/ページ数 180p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784794967077
  • NDC分類 944
  • Cコード C0098

出版社内容情報

ナチスドイツのユダヤ人大虐殺=ホロコーストで大きな役割を果たし、1960年、逃亡先のアルゼンチンでイスラエルの秘密警察によって逮捕され、絞首刑になったアドルフ・アイヒマン。本書は、アイヒマンの息子にあてた公開書簡の形式をとっている。世界がグローバル化し、誰もが組織の歯車になりかねない時代に、個人の責任とはなにか、上意下達の組織、社会でいかにしてアイヒマン的存在から抜け出すか。自分で考える力の必要性を問う哲学の本。

内容説明

ナチスドイツのユダヤ人大虐殺の責任者と目されたアドルフ・アイヒマン。本書は、その息子クラウスにあてた哲学者の公開書簡である。今日、世界中が最大の成果と効率をめざし、人々は経済活動に駆り立てられている。世界がひとつの「機械」になるとき、人間は機械の「部品」となり、良心の欠如は宿命だろう。かつてアイヒマンは、「自分は職務を忠実に果たしただけだ」と言った。はたしてわれわれにアイヒマン的世界から脱け出すチャンスはあるのだろうか?だれもが「アイヒマン」になりうる不透明な時代に輝きを放つ、生涯をかけた思索。

目次

クラウス・アイヒマンへの公開書簡(二度の喪失;もっと多くの喪失;尊敬がないところには哀悼も生まれない;人を尊敬する者のみが尊敬を受けることができる;怪物的なもの;暗い世界;地獄のような法則 ほか)
クラウス・アイヒマンへの第二の書簡(無関心に反対する)

著者等紹介

アンダース,ギュンター[アンダース,ギュンター][Anders,G¨unther]
1902年、ブレスラウ(現・ポーランドのブロツワフ)で生まれる。「他者」を暗示するアンダースはペンネームで、本名はシュテルン。両親はともに著名な児童心理学者であった。フライブルク大学、マールブルク大学でフッサールとハイデガーに哲学を学ぶ。29年、ハンナ・アーレントと最初の結婚。33年のナチの政権獲得後にパリ、つづいて合衆国に亡命。ジャーナリスト、工場労働者として働く。50年、ヨーロッパに戻る。戦後は国際的反核運動の指導者となり、58年には来日した。オーストリア文化賞、ウィーン出版文化賞、アドルノ賞などを受賞。92年、ウィーンで死去

岩淵達治[イワブチタツジ]
1927年、東京生まれ。東京大学文学部独文科卒。学習院大学名誉教授、ミュンヘン大学名誉博士。ドイツ文学、演出家。湯浅芳子賞、日本翻訳文化賞、ドイツ連邦政府レッシング翻訳家賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みねたか@

26
哲学者によるアイヒマンの息子に向けた2通の公開書簡。ドイツオーストリアはもちろん現代に生きる全ての人々に鋭く問が投げかけられる。即ち「『なにひとつ知ろうとしなかった』ことで消極的に犯罪に加担していないか」,「自分の行為の効果に対して故意に自分自身を盲目にしていないか」と。様々な言説が氾濫する中正しいことを知覚することの難しさ、特に自分と関わる事の効果に正面から向き合って対峙することの痛みをかみしめる。2019/01/21

ぼけみあん@ARIA6人娘さんが好き

4
哲学者の著者がアイヒマン処刑後にその子息クラウスに送った文明評論を兼ねた公開書簡なのだが、徹頭徹尾、対話相手不在で議論が展開する。相手からの返答がないことよりも、最初の書簡からして一方的で、生きた対話相手の存在が感じられない。25年後の第2信にしても、クラウスが歴史修正主義的な考えの持ち主かどうかも知らないくせに「あなた方」と呼びかける著者には、他者に対する尊敬の念や現実的な想像力が欠落しているようだ。クロード・イーザリーとのやりとりの成功に味をしめてのことだろうが、その試みは見事に失敗している。2012/05/20

バルバロ

3
筆者が主張するアイヒマンが決定的に罪深い理由/①過程の最終的な結果を想像しうる立場にあった点(システム・組織の製作者であった)②製造する力と想像する力の「格差」を理解した上で、その「格差」を自己弁護のために利用した点③計画の遂行のために作業者から想像力を積極的に奪うことで計画の遂行に努めた点/最終的な結果を想像することのチャンスを奪われた「罪なき」共犯者とは以上の点で異なるため、同情することができない。2014/01/05

とくま

1
△語りかけ。2015/06/17

とんこつ

1
ただなんとなく図書館で目に入り、手にとって借りた本なのでこれほどの衝撃を受けるだろうとは予想だにしなかった。僕たちは誰かの痛みを知覚することは決してできない。でも、誰かの痛みを想像しようとすることはできる。もちろんそれにも限界はある。だからといって、想像力を、思考力を停止させてはいけない。限界と無力さを感じながら、それでも行為するときだけ「怪物的なもの」やアイヒマン的なものに対峙できうるからだ。機械の部品と化してはいけない。2011/12/11

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