内容説明
埋もれていた内田魯庵の小篇に、見失われた知の原郷が隠されていた―。内田魯庵(明治元~昭和4)。若くしてドストエフスキイの『罪と罰』を翻訳、丸善顧問として輸入洋書の大半に目を通し、『学鐙』を編集する。当代一の随筆家と目されながら、一度も流行児とならず、友はつくるが組織によらず、独自の道を歩く。近代日本の諸学(人類学・考古学・民俗学・美術史…)は、学校のようなタテ型でない趣味や遊びに根ざした市井の自由なネットワークに芽吹き、魯庵はその象徴的存在だった。本書は魯庵を手がかりに、近代日本に一貫して流れる知の最良の部分と粋な日本人たちを壮大な規模で掘り起こす、歴史人類学の達成。
目次
1 魯庵の水脈(その始まり;明治の逸人―西沢仙湖;野のアカデミー―集古会;和綴の雑誌―『集古』;蒐集家の筆頭―林若樹 ほか)
2 魯庵の星座(地方を結ぶ「いもづる」ネットワーク;「いもづる」に集まった人びと;ハイブラウ魯庵の敗北―三田平凡寺;大正の現実と国際的知を繋ぐ力―アントニン・レーモンド;尋常小学校分教場の趣味宇宙―板祐生 ほか)