内容説明
失われた夫婦の愛は二度と甦らないのか。北ドイツの海辺の館。心通わぬ妻から逃れコペンハーゲンの宮廷へ。伯爵がもとめたつかのまの恋…。没後百年、十九世紀独文学の高峰フォンターネの幻の名作。
感想・レビュー
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ばん
3
写実主義文学のフォンターネ、肌に触れるような読書体験だった。貴族階級の中年夫婦の恋愛を描いたものだが、そこには日常と現実を感じられ『親和力』と比較したくなった。描写は豊かで味わい深く、風通しのよい作品であった。ホルクの愚かさと、クリスティーネの苛烈さは、昼と夜が森と砂漠が、酒宴と会議が同時に存在するようだが、それでもきっと愛はもっと中立的に存在しえたはずだった、しかしきっと忘却と記憶だけはどうしても、無理であった。それが悲しくて、華やかな舘や風景が何を踏みつけているのか痛く知る事になった。2012/09/06