出版社内容情報
はじめて、そのお葉が責め絵の伊藤晴雨のモデルであり、洋画の藤島武二のモデルでもあったことを知った。モデルであっただけではない。伊藤晴雨とはその責め絵さながらの変態的性関係にあった。お葉十三歳から十六歳の三年間であったという.....。(立花隆『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』103頁、より)
内容説明
竹久夢二のモデルとして名高いお葉(佐々木カ子ヨ、お兼)は、責め絵画家・伊藤晴雨と洋画家・藤島武二のモデルでもあった。従来の夢二伝説から浮かび上がるお葉像は、夢二をさんざんこけにした多淫な情人というものだった。だが、お葉は本当にそれだけの女だったのか。まったくタイプの違う画家に、それぞれ多大なインスピレーションをあたえたお葉。画家たちは彼女のなかに何を見たのか。画家とモデルの抜き差しならぬ関係を、膨大な資料によって読みとき、大正という時代に生きた希有なモデルの生涯をあきらかにする女性評伝。
目次
第1章 モデル誕生
第2章 藤島武二と伊藤晴雨
第3章 夢二とふたりの女
第4章 「お葉」という美神
第5章 あらたな出発
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アイアイ
17
大正時代、3人の異なった画風の画家を虜にして名作を生み出させた、若き秋田美人のカネヨ。上京後、貧しい生活の中で当時偏見の多かった絵のモデルになり、まだ成熟してない十代の幼い体で縛られる攻め絵や美学生との痴情などを数多く経験、夢二との6年に及ぶ同棲と泥沼の関係、晩年は医師と再婚、玉の輿で一番安らかな余生を送った。妖美なモデル時代から、73歳の上品なカネコさんの写真に様々な荒波を乗り越えしたたかに生き抜いた女性の陰と陽の輝きをみた。▽図書館2015/09/23
ゆずこまめ
2
お葉さん、いやお兼さんの写真がいくつか載ってますが、本当に美しいのです。凛とした近寄りがたい美ではなく、憂いを帯びた表情で可愛らしさもあり思わず手を伸ばしたくなるほど色っぽい。モデルとして大人気だったのもわかります。中身は生命力に溢れた普通の女性という印象。夢二は夫としては最悪で、お兼さん別れて正解だった。2024/04/01
takao
2
ふむ2022/12/05
Gen Kato
2
竹久夢二伝ではもっぱら悪役に描かれることが多かった「お葉さん」。いささか彼女の心理が推測で綴られ過ぎている感はあるものの、今までの類型を脱するという意味では意義のある一冊。それぞれの強さやずるさ、男からの誘惑に弱いところも含めて、夢二の最初の妻たまきもカネヨ(お葉さん)も彦乃(しの)も、みんな現代でもめずらしくない普通の女性たちだったのだと思う。「美しき女流作家」を目指した自分大好きの山田順子も含めて。山田順子みたいなひと、SNSではいっぱい見かけますよね…2015/09/06
s
1
少女にして儚げでありながらたっぷりとした妖艶な空気感。 表紙の写真がお葉です。思わずはっとしました。 あ、これは叶わない、、、と。同じ女性からするともう戦わずして負けを認めざるを得ない。絶世の美女なんかよりおそらくもっと手強い。写真も多く登場しますが、中でも夢二が撮ったという彼女の裸身の後姿は美しいの一言。 これだけの容姿に生まれつくと本人の意志と無関係に男性を呼び寄せてしまうのでしょう。一流の画家たちが彼女にインスパイアされたのもうなずけます。ある女性の一つの生き方としても楽しめる本でした。2015/05/09