内容説明
男は漁業、女は編物で生きる石と風の島。アラン島のセーターには、こんな伝説がある―。海の男たちが遭難したとき身元がわかるように、女たちは愛する人のセーターにそれぞれの模様を編み込んだのだ、と。哀しい伝説にみちびかれ、アイルランド西端にある小さな島々への旅がはじまった。アラン模様の創始者の末裔を訪ね、羊毛商人の足跡をたどる。旅の果てに出会ったのは、アランセーターの真実の歴史と、そして逞しく心やさしい人々とのふれあいだった。生活のなかに伝統がゆたかに息づくアイルランドへの、みずみずしい紀行。
目次
1 アイルランド点描
2 石と風の世界
3 アラン伝説の謎
4 海へ騎りゆく人々
5 ケルト音楽のように
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
319
著者は主に旅の分野で活躍する文筆家。編み物は趣味の領域。本書では、アラン島のセーターをめぐってゲールタハト(アイルランドのゲール語地域。ここでは主としてゴールウエイとアラン諸島)を逍遥し、アラン模様のセーターのルーツを探ったり、いろんな人にインタビューを試みたりといった、やや行き当たりばったりではあるものの、それなりに実りの多かった紀行。ヨーロッパの最果てのアイルランドの、そのまた最果てに位置するアラン諸島。荒涼たる島のようである。また、そうであるがゆえにアラン模様(実に多様)がいとおしくなるのである。2022/08/06
kinkin
101
アラン島というのはアイルランドから少し離れた小さな島。著者はそこで作られるセーターに興味を持ちその作り方や、セーターのルーツとともにアラン島のこと、アイルランド紀行を綴る。ざっくりと編まれたセーターの模様にそれぞれ意味があることを知った。日本に近いものは多いがアラン島で作られたものは少ないと思う。そしてアイルランドというところは高級生地のツイードの本場でもある。ツイードのスーツでパブに寄ってウィスキーを一杯、憧れるなあ。一度行ってみたい国だ。紀行文の面白さに満喫。図書館2022/07/04