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内容説明
耳が不自由で、27歳まで言葉を知らなかったメキシコの青年イルデフォンソ。パートタイムの手話通訳者になったばかりのスーザンは、ある日、聾者クラスで彼に出会った。言葉の概念さえもたない彼に、彼女は全身で語りかける。献身的なスーザンとの絆に支えられ、ついにイルデフォンソは手話で自分を表現しはじめる。人と人との出会いが生む奇跡を描き、不可思議な人間の可能性に光を投げかける、感動のヒューマン・ドキュメント。
目次
1 名前のない世界
2 はじめての言葉
3 すべてのものには名前がある
4 二十の名詞、七つの形容詞
5 対話
6 二人の冒険
7 聾とはなにか
8 「緑」色の謎
9 目に見えないもの
10 眼鏡
11 28歳の誕生日
12 別れのとき
13 遠い夢
14 他者との結びつき
15 再会
16 閉ざされた過去
17 もうひとつの世界
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
46
例えば、物には名前がありそれを表す文字があるということを27歳で初めて知ったとしたら。パートタイムの通訳者として、一人の印象的な聾者に接した筆者によるルポルタージュ。所謂研究者ではないため、迷いや感動を包み隠さず記している点に好感が持てました。ヘレン・ケラーが水を認識した瞬間(本書では猫)は感動的ですが、その後のたゆまぬ努力にこそ心を打たれるべきだと改めて気付きました。序文はオリバー・サックス。2015/03/01
みや
34
難聴と環境のために27歳まで言葉を知らなかった青年イルデフォンソが手話通訳者と出会い、自分を表現し始めるノンフィクション本。実話だとは信じられないほどに想像を絶する孤独だった。言葉というものが存在していることすら知らない彼は、様々な言葉を通じて伝達される情報や知識の全てを欠いている。自分の名前も時の観念も「好き」の概念も無い。彼が言葉を得るまでの思考は、どんなに頭を絞っても想像が及びもつかなかった。特に努力をせずとも言葉や知識を子供の頃から当たり前に享受している自分は、本当に恵まれている。深く痛感した。2017/08/25
ブリーゲル
11
今年一番の良書。 27歳まで言葉の無い世界で生きた男の話。 人間は感情を共有する事で、孤独を少しだけ軽減できるとしたら、言葉を失った27年の彼の孤独はとてつもない物となる。 物に名前が有る事が分かり、言語を共有できるようになり、言葉の無い世界で生きた少年期の事を語るあたりは特に興味深かった。 大変な労力にて言語を習得する過程「私の努力は、現実のむごい衝撃を和らげてくれる無知という唯一のクッションを彼から奪ってしまったのではないか?」という一言が深かった。 良書だが読者が異常なほど少ない。2014/11/03
橘
8
言葉を持たない知性に時間の概念はあるのだろうか。本書には内的言語を持たないであろう存在の思考に関して、ずっと疑問に思っていたことが書かれている。学術的な興味から読み始めたが、彼らの現実は過酷だった。言語を持たないコミュニティなど、知らずに済ませられない状況ばかりだ。僅かでも知的好奇心を持つ人なら、読んでみるべき。2016/12/22
みぎ・妖子
4
言葉という概念を知らない人間は何を考えてどのような感覚で生きているのか、筆者がイルデフォンソと出会って彼に言葉を教えていくという話。カスパーハウザーなどの特異な例とは違い、正常な環境で育っても尚、筆者と出会うまでことばを知らなかった。筆者の指導の仕方がうますぎる。言語を書いた思考、どのような感覚なのか。本当に深い話で、新たに考えたい問題がたくさん出てきた。『妻を帽子とまちがえた男』と共に是非読んでみて下さい。というか、誰も読んだ人がいないのが驚き。2009/05/01
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