内容説明
美術批評家、地質学者。社会思想家。ナチュラリスト。詩人―。たくましい好奇心を持ち、けっして自らを偽らず、真実と信じることを語りつくした男、ジョン・ラスキン。19世紀後半のイギリスでラスキンが描いたユートピアの夢は、ウイリアム・モリスから毛沢東まで多大な影響を与えつづけた。20世紀社会の礎となった壮大な思索に、作品を丹念に読み解きつつ迫り、人間ラスキンの魅力をいきいきと語りあかす。ラスキン今日的意味を再考する刺激的な評伝。
目次
ターナーの擁護者
批評家と理論家
転換期
胡麻と百合
オクスフォードと『フォルス・クラヴィゲラ』
『プラエテリタ』
私的生活
評価
感想・レビュー
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壱萬参仟縁
21
1963年初出。ラスキンの優柔不断と当惑は戦争観に表れているという。恐怖で戦争の野蛮さから尻込みし、兵士は、制服を着せた人の傀儡だとわかっていた。空想上の戦争ゲームをした子ども時代(97頁)。失業者に道路掃除の仕事を与え、家の使用人に紅茶箱を施し、アルプス山脈の牧草地を買おうとし、ティティアンの絵を買い、オクスフォードに絵画学校を設立し、コレクションを無料で提供、女学校に補助金(118頁)。ラスキン独自の文化政策だったろう。彼は『近代画家論』を終えると、長い散文を書こうとしなかった。人生は蒸気に過ぎぬ。2020/09/05
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