内容説明
中学生のとき、偶然、ラジオで聴いたビクトル・ハラの歌。それは、それまで耳にしたことのない、不思議な力と温かさに満ちた歌だった。彼の歌に魅了された著者は、彼の生きかた、死、そしてその意味を知りたいと思うようになり、実際に中南米への旅にでる。死後20年近くをへて、いまもなお世界中で支持されているビクトルの歌。けっして失われることのないその輝きの背後にあるものを、生前のビクトルと交渉のあった人々の肉声をもとに、浮かび上がらせる。
目次
1 死者の歌声
2 ハバナ―シルビオ・ロドリゲスの話
3 メキシコ・シティ―レネ・ビジャヌエバの話
4 糸を手操って―エドウァルド・カラスコの話
5 描かれる輪郭―レネ・ラルゴ・ファリーアスとインティ・イリマニの話
6 演劇監督ビクトル―アレハンドロ・シェベキングの話
7 パリからの伝言―アンヘル・パラの話
8 銃についての考察―ルイス・エンリケ・メヒア・ゴドイの話
9 歴史は動く―ジョーン・ターナー夫人の話
10 ポブラシオン・ラ・ビクトリア
11 再び、街に
ビクトル・ハラ年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
秋 眉雄
14
シンガーであり、ブック・ライターの八木啓代さんがビクトル・ハラについての証言を掻き集めながら、そこから浮かび上がるビクトル・ハラの人物像とチリの当時と今の(と言っても1980年代後半ですが)情勢を語る一冊です。2018/07/28
左手爆弾
3
ビクトル・ハラについて客観的にまとめた本というよりは、むしろ知り合いのつてを辿って主観的につづった本。そういう意味で、わかりづらいと言えばわかりづらい。ただ、中南米におけるの社会主義と音楽、自由の関係はむしろこうした描写の方が見えやすいのかもしれない。極めて素朴な言葉でマルクスやエンゲルスを語り、ある時は演劇の演出家であり、農民の鋤のようにギターを弾く、そんな音楽家は日本ではほとんど考えられないだろう。彼らの言う「自由」や「権利」は日本で気易く語られるものとは、何か違う気がしてならない。2012/10/04
cronoq
2
20年前、ありもしない「アンデスの哀愁を帯びた、インカ伝承の音楽」にどっぷり浸かっていた私が、キラパジュン、インティ・イリマニ、イジャプなどを聴いていたにも関わらず、存在を知りながらも避けていた本。今更感たっぷりで読み始めたのだが、読んだのが今でよかったと思った。20年前の私には、地球の裏側の遠い世界の物語としか読めなかっただろうし、理解も共感もできなかったに違いない。まだ共感はできないが、ここには情熱的で歓楽的なだけではない、真摯で真剣なもうひとつのラテンアメリカ音楽の側面があるように思う。2011/05/25
mrbeats197912
1
八木さんの主観を通じて見えるビクトル・ハラ。親交があったというチェ・ゲバラのエピソードにぐっと来た。ラテンアメリカもう一人の革命家=歌。2013/01/13
saito_kiyoaki
1
歌はどれだけの可能性を持つか。歌はどれだけの心を鼓舞させられるか。熱が伝わる筆圧でした。2012/11/03