内容説明
「先生、俺、きっと頭が変なんです」―精神科医マシューズの診察室に現れた青年は、真っ赤なハイビスカスを髪に挿していた。そうしていると小人が一日十ドルくれるというのだ。青年の話に興味を惹かれたマシューズは、彼と同行してその小人に会いに行くが、やがて自身、悪夢のような事件に巻きこまれてしまう。異色傑作『悪魔に食われろ青尾蠅』で本邦でも注目を集めたバーディンの、奇抜な設定と破天荒なプロット、心理的恐怖が際立つ第一作。
著者等紹介
バーディン,ジョン・フランクリン[バーディン,ジョンフランクリン][Bardin,John Franklin]
1916‐1981。アメリカの作家。1940年代に発表した『死を呼ぶペルシュロン』『殺意のシナリオ』『悪魔に食われろ青尾蠅』の三作は、その先鋭性ゆえに、一時期完全に忘れ去られたが、70年代に入ると、精神の暗黒部を探究した心理ミステリの傑作としてジュリアン・シモンズらに「再発見」され、劇的な復権を果たした
今本渉[イマモトワタル]
1961年大阪府生まれ。東京大学文学部卒
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感想・レビュー
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紅はこべ
91
記憶喪失によるidentity crisisもの、悪夢的展開、精神病と記憶喪失が重なると、当然信頼できない語り手かとなるが、そう一筋縄ではいかず。マシューズ先生、頭を打ちすぎだろう。それでも何とか生き延びたのに、最後はどう受け止めればいい?ソマーズ刑事のプロファイリング、意外と的を射ていたりして。セアラはソニアの存在を知らずに済んで良かった。アンダスン警部もちゃんと被疑者の身元調査をしようよ。2019/01/31
空猫
35
【海外ミステリマストリード55/100】久々に傑作。誰の言葉も行動も信じられない上に、記憶まで曖昧だという設定で、人はどんどん殺されて、予測を次々と裏切っていく面白さ。翻訳もよみやすくとても楽しい時間だった。「ペルシュロン」とは馬の品種名。2023/07/19
本木英朗
19
アメリカの1940年代のミステリ作家であるジョン・フランクリン・バーディンについては、俺は1作目(つまりこれ)と3作目をそれぞれ1回ずつ読んでいた。今回新たに1作目をもう一度、ということだ。「先生、俺、きっと頭が変なんです」――精神科医マシューズの診療室に現れた青年は、真っ赤なハイビスカスを髪に挿していた。そうしていると小人が一日十ドルくれるというのだ。青年の話に興味をひかれたマシューズは、彼と同行してその小人に会いに行くが、やがて自身、悪夢のような事件に巻き込まれていく……という話だ。なるほどねえ。2020/03/15
鷹図
7
「先生、俺、きっと頭が変なんです」――。精神科医マシューズの元に、真っ赤なハイビスカスを髪に挿した青年がやって来る。曰く「指定された花を髪に挿しておくと、1日に10ドルくれる小人がいる」のだという。患者の戯言、と見なすマシューズだったが、青年の具体的な陳述に次第に興味を持ち……。日常ミステリとして幕を上げた本書は、精神科医であったはずのマシューズが逆に精神病棟に監禁され、ジョン・ブラウンなる別人の身分を与えられた辺りから、不条理ミステリへと変貌を遂げる。謎の小人集団、謎多き連れ合い、そしてペルシュロン。2016/01/14
うぃっくす
3
面白かった。よみやすいし。小人がお金をくれるんです、って精神科医のところをハイビスカスを頭にさした青年が訪ねてくるところからお話スタート。幻覚だろそれ、って思ってたらほんとに小人がいた…っていうのも最高。そのあといろいろ事件が起きて何が真実で何が嘘かもわからないし俺は誰なんだ…みたいなドグラマグラ感も楽しめるし3時間くらいで読めるからちょうどよかった。2020/10/15