内容説明
『家蝿とカナリア』『割れたひづめ』などの本格長篇で知られるヘレン・マクロイは、本格・サスペンス・異色短篇からSFまで、幅広いジャンルにまたがる短篇の名手でもあった。清朝末期の北京を舞台に、ロシア公使夫人の謎めいた失踪事件を精緻な筆致で描いて、名作の誉れ高い「東洋趣味」を巻頭に、女教師の分身が奇怪な事件を召喚する「鏡もて見るごとく」、ダイヤ型の謎の飛行物体を目撃した人間が次々に怪死を遂げる「歌うダイアモンド」、深層心理というテーマに真正面から取り組んだ問題作「カーテンの向こう側」、終末戦争後の世界を淡々と描いて深い感動を呼ぶ「風のない場所」他、〈クイーンの定員〉にも選ばれた名短篇集の珠玉の傑作8篇に、15年前の事件に決着をつけるため帰ってきた男が、再び殺人事件に巻き込まれる、サスペンスと謎解きを融合させた中篇「人生はいつも残酷」を併録。
著者等紹介
マクロイ,ヘレン[マクロイ,ヘレン][McCloy,Helen]
1904‐1992年。アメリカの作家。精神分析学者ウィリング博士を探偵役にした本格ミステリや、プロットに技巧を凝らしたサスペンス小説で人気を集め、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)会長も務めた
好野理恵[ヨシノリエ]
翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
52
綺羅で織り成した悪夢と眩惑と論理のヘレン・マクロイ短篇集。この短篇集で特出すべきはヘレン・マクロイがSFも書いていたこと!特に気に入ったSFは人工培養と加工検査済みの料理が食卓の主体となる中、自然と人の手から作られた料理を求める主婦を描く『Q通り十番地』。そして深層心理という底無し沼と現実にずぶずぶと沈んでいく『カーテンの向こう側』が怖すぎる・・・。『東洋趣味』は切なくも甘くほろ苦い郷愁に胸を締め付けられます。ベイジルものと言える『鏡もて見るごとく』は同シリーズの『暗い鏡の中に』と似ていますね。2014/01/26
たまご
20
表題作,なんとなくスペースSF?と思っていたら,あらびっくりミステリでした.非現実的な現象を,悪意ある故意の出来事に作り替えていくところに作者の容赦のなさを感じ.今の自分の生活がふと不安になってしまうような不安定感がくせになりますね! と思っているところで「風のない場所」のような作品があるなんて.作者の幅の広さを感じます.たまりません~2018/06/11
アプネア
17
死を呼び寄せる謎の飛行物体、頻出するドッペルゲンガーの恐怖、頽廃に満ちた魔都の闇に消えた美貌の貴婦人など、本格からSFまで珠玉の短編集・・・。8篇中半分は奇想溢れるSFなのでちょっとびっくり。お気に入りは「人生はいつも残酷」:15年前の自分自身の殺人事件を解決するために帰ってきた男が、また事件に遭遇する。不穏な空気のなかに、緊張感あるサスペンスが融合した名作。2022/10/25
空猫
11
『性食考』より「ところかわれば」目当てでだったけど、既読だったよorz
Nanami
10
短編集。全体を覆う不穏で不安な雰囲気が好きです。「東洋趣味」「鏡もて見るごとく」「Q通り十番地」「風のない場所」が良かった。ミステリもいいけど、SFもいい。短編ならではの、削りに削った文章でさらに際立っていると思いました。手元に置いておきたい本。2013/12/04