内容説明
お屋敷付き運転手のP・モーランは通信教育の探偵講座を受講中。気分はすっかり名探偵の彼は、習い覚えた探偵術を試してみたくてたまらない。ところが尾行の練習に選んだ相手が“たまたま”麻薬密売人で、あやうく一味に消されそうになったり、古今の名作ミステリをお手本に、消えたダイヤ探しに乗り出したものの、あまりに手本に忠実すぎて、依頼主の部屋を滅茶苦茶にしてしまったりと、シロウト探偵の暴走が毎回とんでもない騒動をひきおこす爆笑ユーモア・ミステリ連作集。
著者等紹介
ワイルド,パーシヴァル[ワイルド,パーシヴァル][Wilde,Percival]
1887‐1953。アメリカの劇作家・小説家。ヴォードヴィル用の一幕物や小劇場演劇の大家として活躍、100本を超える作品は全米1300以上の都市で上演され、各国語に翻訳された。ミステリの分野では、『悪党どものお楽しみ』(29)の元ギャンブラー探偵や、本書の通信教育探偵など、豊富なアイディアと軽妙なユーモアにあふれた連作短篇で好評を博し、法廷ミステリの古典的名作『検屍裁判』(1939)、『ティンズリーの骨』(42)など、長篇ミステリも4冊発表している
巴妙子[トモエタエコ]
お茶の水女子大学文教育学部卒業。翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
50
お金持ちのお抱え運転手モーランと通信教育の探偵社の講師との手紙のやりとりだけですすむ書簡ミステリー。まず、探偵術の通信教育講座というのがおもしろい。尾行、推理法、放火犯、ホテル探偵、脅迫状、ダイヤモンド盗難、指紋とステップアップしていく課程に従って、事件に巻き込まれたり、首を突っ込んだりしつつ本人が気づかないうちに偶然が重なって運の良さで事件を解決してしまったり、素人探偵モーラン大活躍。モーランに首を突っ込まれた犯人はえらい迷惑大災難(笑)2016/02/26
Panzer Leader
46
「第102回海外作品読書会」通信教育講座で探偵術を勉強中の屋敷付き運転手のモーラン。習いたての技を使ってみたくてウズウズ。講師のアドバイスもなんのその、勝手に暴走するも事件は本人の自覚もないままいつも間にやら解決。現代でも十分通用するドタバタコメディ。ただ1,2編読むにはいいけど、まとまった短編集としてはちょっとお腹いっぱい。「悪党どものお楽しみ」や「検死審問」シリーズほどではなかったかな。2018/01/29
ゐづかさん
11
解説にもあるように、「パロディとはそれ自体が一つの批評である」が、「狂人の真似をする者は狂人である」と吉田兼好が言ったように、ミステリのエッセンスを分析し抽出し模倣しようとするパロディ作品は、パロディであると同時にミステリそのものでもあるのではないかと思う。著者のミステリに対する愛着と理解が伝わってくるこの作品は、批評としても、ミステリとしても、傑作である。2014/01/02
tomoe
10
通信教育講座で探偵術を学ぶ運転手P・モーランが様々な事件に遭遇し、ハチャメチャな言動で大暴走。なのにラッキーな事に事件はいつも解決してしまうコメディ。「ユーモア・ミステリ」という言葉がぴったり。ウィットに富んだ大人の為の小説。「P・モーランと消えたダイヤモンド」はモーランの目を覆いたくなる暴挙に抱腹絶倒必至です。2010/03/15
左近
9
お屋敷のお抱え運転手モーランは、通信教育で華麗なる名探偵へと変身、数々の難事件を見事に解決…したと本人も周囲も思い込む。モーランのはちゃめちゃっぷりに退学処分を決定したかと思えば、金になりそうだと踏むと一枚噛もうとしたり、我が校の誉れだと調子よく宣伝に使ったりする探偵通信教育学校とのやりとりもユーモラス。消えたダイヤモンドを探すため、数々の推理小説を下敷きにフィンドレイ邸を驚愕と混乱の渦に巻き込んだ挙げ句、危うく探偵学校が火の海になりかける下りは最高。ミステリ・マニアは怖い?2012/02/14
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