感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
市太郎
71
この本に惹かれたのは、まず「ソンブレロ落下す」という超絶かっこいいタイトルと表紙の妖艶なる山口小夜子の視線である。読メをやっていなければ、知る由もなかったMの世界への開花は小夜子様の視線の前で屈服する事を喜びとス。表紙賛美はそのくらいにして内容をバ。読メがなければそもそもブローティガンを知る事も無かっただろうが、彼は谷崎潤一郎にこの書をささげている。彼にとっての官能とは一筋の日本の髪であるらしくその精神世界は狂。紙屑籠の中に捨て去った物語が、クレイジーな狂騒を奏で続けても、雪子はただ眠り、眠り姫の官能に。2015/04/30
またゆき
2
これ好き。延々と眠り続ける雪子がいれば、街の半分以上の人を狂気においたてるソンブレロありで物語が冷えたと思ったら熱せられ、また冷えるを繰り返して、ドッカーン!! となるわけですね。ユーモア小説家の立ち居地も好き。2014/03/27
taruho
1
狂気と静寂の物語だった。小説家が破り捨てた原稿用紙がくずかごの中で物語が広がっていく。空から落ちてきたソンブレロをめぐり暴力を孕んで暴動へとぐんぐん加速する狂気の物語だ。現実の世界では、小説家と別れた日本人女性が眠りつづける。猫のごろごろと喉を鳴らす音が彼女の夢へと誘い、亡くした父親との幸せな夢を見る。雨がそぼ降る静寂の世界だ。美しい。そして小説家は去って行った恋人の思い出にしがみつきのたうち回り、見つけた恋人の一本の髪の毛に狂喜する。やれやれ…。2つの世界のコントラストがなんとも奇妙な読み心地だった。2014/01/27
pon
0
終始雪子が眠り続けるあたり、村上春樹の『アフターダーク』に似ている。2013/08/04
花きちがい
0
恋人と別れた小説家、その男が書きかけて止めた小説は屑籠の中で膨れ上がり加速し、一方美しい元恋人は永遠を閉じ込めたかのような眠りを眠っている。血と暴力の世界と、甘美な永遠の世界、それら二つを抱え込んだ、夜中の1時間15分。二つの世界に引き裂かれた男はどうなるのだろう。2010/11/28