内容説明
1899年。アメリカ。農場の娘ネルは18歳の高校生。大学にすすみ、大好きだったショーおばあちゃんのようにボストンで働くことが夢。でも両親は、いとこのアンソンとの結婚をしきりにすすめる。結婚?大学生にもなれないし、男の子のように遠い海に出てゆくこともできないなんて―そう思いこんだネルは、おばあちゃんの形見の布でキルトをつくりはじめる。結婚式がちかづくにつれ、ネルはどんどんやせ細り、キルトは日に日に大きく、重くなってゆくが…。未来の夢がくずれたとき、キルトが生きがいになった。心病む少女の“再生”の物語。最優秀ヤングアダルト図書賞受賞。
著者等紹介
テリス,スーザン[テリス,スーザン][Terris,Susan]
1937年生まれ。サンフランシスコ在住。70年より、ヤングアダルト文学、児童文学作品を数多く発表。『キルト―ある少女の物語』は、全米図書館協会により「最優秀ヤングアダルト図書」に選出されている
堂浦恵津子[ドウウラエツコ]
1951年、東京生まれ、中央大学大学院哲学専攻修士課程修了。高校教師を経て、現在翻訳家
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感想・レビュー
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シュシュ
25
20世紀になる頃の設定だが、古さを感じなくて一気に読めた。拒食症が進んでいく18才の少女ネルの苦しい心の内が描かれている。きっかけは、高校を卒業後にいとこと結婚するように両親からすすめられたことだった。少女が様々な葛藤を抱えて、小さな自分の頭の中で考えすぎてしまう気持ちがよくわかる。心身ともに弱っていく最中にもキルトを作り続け、心の中に時折「君の勇気をためそう」という幼なじみの少年ロブの声が聞こえてくる。死は、遠くへいくこと。でも、生きることも遠くへいくこと。最後の場面に希望を感じた。2019/08/18
seraphim
9
YAリストのために読んだ。1899年18歳の少女ネルは、いとこのアンソンと結婚することになる。突然のことに戸惑い、心と身体のバランスが崩れていくネル。大好きな祖母の形見の端ぎれでキルトを作ることだけが生きる支えになっていく。ところが実は端ぎれは祖母の形見ではないことが発覚して!…。今から100年以上昔のお話だけれど、普通の女の子が現実とどう向き合うかということは、昔も今も変わらない。生きるってままならない。生きることってなんだろう。いくつになっても、答えなんか出ない問題だと思った。2013/07/05
帽子を編みます
7
つらい話、女の子がキルトを作る話かな?(『赤毛のアン』『大草原の小さな家』みたいな感じの)と思って読んだのに…。高校卒業を控えた1899年2月末主人公ネルは、知り合い(年上、死別、子持ち)との結婚話を進められます。嫌なら断れば、いいのにとは思うけど、周りの人の影響を受けやすい年頃です。要領よく怠ける妹、働きづめの母、言葉の足りない父、自己犠牲で暮らしがよくなるなら…。決断することがみんな外れて追い詰められていく絶望感。主人公がせめてもの希望として作るキルト、その根拠さえ偽物だなんて、悲しい、涙、涙、涙。2020/04/26
りんごのき
2
時代が20世紀へ向かおうとしている時代。憧れていた祖母のように生きたいと望むネルの元へ、いとことの結婚話が持ち上がる。自分の願いと家族の思惑の板挟みになり、ネルは心を病む。彼女を支えたのは、祖母の形見の端切れで作るキルトだった。ほぼ一気に読み終えて、この時代の女性の生き方に思いをはせる。登場人物それぞれの思いが単純ではなく、皆が、行き場をなくして立ち尽くしているような閉塞感がぶつかり合う。決して読後感の良い物語ではないが、現代の若者、特に女の子には是非読んでほしい。2016/05/31
星落秋風五丈原
2
今から一世紀ほど前、親から決められた進路以外に選択肢がなく、どんどん追い詰められていく少女の物語。一体どうなってしまうの?と思わせるラストが気になる。2013/06/29