感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
74
『ベルリンの幼年時代』とその前段階の『ベルリン年代記』を収録。『幼年時代』は、ガス灯、「最初の頃の電話」、冬の朝のもの憂さ、昨夜の夢の不安といった幼年時代の思い出が泡のように浮かんでは消えてゆき、そこから富裕で落ち着いて幸福な19世紀ベルリンのブルジョア地区が浮かび上がるさまにため息が出るよう。ただそれは恐らく、ナチスの足音が迫るなか「致命的な危機的状況」に置かれた作者が、過去の幸福のイメージから私たちに付与された”かすかなメシア的な力”を希求するために書いたものでもあって、そのほの暗い美を堪能しました。2024/12/04
踊る猫
25
甘美な「幼年時代」を描いた美文、を期待して読んだ。もちろんこの散文は野村修の訳文じゃなくても充分美しい。だが、ベンヤミンの姿勢は単に幼年期に溺れて退行していくわけではない。性の目覚めまで果敢に掘り下げて描く姿勢はプルーストの姿勢とも共振するものがあり、細部まで思い出して描き切ることは彼がむしろアグレッシヴに考察する書き手であったことを表しているとも言える。時流に逆らって、「いまここ」にない過去を現前させる。だからこそ『失われた時を求めて』にも似たアクチュアルなテクストとして読める。久々にクラクラする読後感2020/04/01
うえ
5
1932年、スペイン東方のイビーサ島滞在中に書かれたベルリン年代記と、「1900年前後のベルリンにおける幼年時代」を収録している。年代記は1970年に遺稿をショーレムが編集したもの。「わたしたちは、忘れたことを二度とふたたび完全に取り戻すことはできない。そしてこれは、おそらくいいことなのだ」「わたしたちの「夏の家」ははじめポツダムに、つぎにバーベルスベルクにあった。そのときわたしたちは、外に、つまりベルリン市から見て外に住んでいた。しかし夏のほうから見れば、それは内であった。夏のなかに巣籠もっていたのだ」2022/11/01
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