出版社内容情報
戦前・戦後期から現行の地方交付税制度に至る歴史と各時期の
運営実態を精緻に解明、制度改革の方向性をめぐる議論を喚起
本書は、萌芽期の財政補給金制度にはじまり、配付税制度、地方財政平衡交付金制度を経て現行の地方交付税制度へと展開していくわが国の地方財政調整制度史において、これまで解明されていない制度内容の詳細や運営実態を総額決定方法と配分方法とに分けて明らかにしたうえで、当該制度の性格や機能、歴史上の位置づけを確認し、ひいては、これらからの示唆を参考に地方交付税制度改革に向けた提言を試みるものである。
本書の研究対象となっている戦前から戦後期にかけてのわが国の地方財政調整制度の総額決定方法や配分方法について、これまで制度内容の詳細や運営実態が解明されなかった最大の要因は、当時の資料がほとんど残っていないことにある。また、戦前から戦後期にかけては、現在ほど統計資料が整理・完備されていなかったこともその一つの要因として挙げることができる。研究者がほとんどいないのも、これらに起因している。
分析にあたっては、各大学図書館、国立国会図書館、国立公文書館、東京都図書館、地方自治総合研究所図書館、東京市政調査会(現、後藤・安田記念東京都市研究所)図書館はもとより、財務省図書館、財務省総合政策研究所、総務省図書館、自治大学校図書館、市町村アカデミー図書館で収集した様々な文献・資料に加え、帝国議会会議録、国会会議録、各時期に制度運営などに関わった内務官僚や大蔵官僚の口述資料をも用いた。これにより、制度内容や運営実態の全貌解明にかなり近づいたといえる。
本書が、わが国の地方財政調整制度の総額決定方法、配分方法の本来はもちろん、実際の運営方法の理解につながり、「正しい制度運営とはどうあるべきなのか」、「地方交付税制度は今後どうあるべきなのか」といった議論を喚起する一助になればと願っている。(なかむら・としひこ)
【目次】