出版社内容情報
地球危機下の世界の姿形をどのように描きうるか?
パンデミックがわれわれに与えた教訓(レッスン)とは?
コロナ・パンデミックによるロックダウン(都市封鎖)の経験は、コミュニティレベルだけでなく個人レベルでもかなりの負荷を私たちに与えた。隔離期間からなんとか安全に抜け出す方法を、個人も国家もひたすら模索してきた。一刻も早くロックダウンを「解除し」、できるだけ早くコロナ以前の「日常」に戻すことが目指された。
もっとも、今回の試練はまた別の教訓(レッスン)を人類に与えている。少なくとも、私たちがテレストリアル(地上的存在)と呼ぶ人々にとってはそうだ。新たな事態を、彼らは敏感に感じ取り始めている。つまり、結局はロックダウンから抜け出すなど誰にもできないということだ。コロナによる健康危機は、実はいま一つのもっと深刻な危機(地球の危機)のなかに埋め込まれているからだ。
しかもそれを、テレストリアルは危機としてではなくチャンスと見ている。テレストリアルを取り巻く世界、彼らを飲み込もうとしている地面(そしてそれを彼らは止められないこと)について理解する機会が、ようやく訪れたのである。本書『私たちはどこにいるのか』は、ラトゥールの近著『地球に降り立つ』(新評論、2019)の続編である。テレストリアルは時として乱暴に地上に着陸するが、その後、彼らを待ち受けている第二の仕事は今後居住する地上の姿形を探っていくことである。そのときどのように自らを助けられるか。連続した短章から成る本書は、この問いに答えを提供する。『ガイアに向き合う』(新評論、2023)以降のラトゥールのこの二書は、新気候体制(今日的地球危機下の世界)の姿を、かつてないほどの明快さで描いていく。
内容説明
そもそも私たちはテレストリアル(地上的存在)であったはずだ。近代人よ、変身せよ。生き物の姿を取り戻せ。カフカの代表的寓話『変身』のテレストリアル的解釈を羅針盤に、人類再生のための方途をコロナ禍の教訓(レッスン)から導出。
目次
1 シロアリになる一つの方法
2 依然かなり広い客間でのロックダウン
3 「地球 Earth」は固有名詞である
4 「地球 Earth」は女性名詞/「宇宙 Universe」は男性名詞
5 連続して雪崩のように起きる、発生に関わる困難
6 「ここ、この下界」で―ただし、そこに上部世界が存在しないとすればの話だが
7 経済を表面に浮上させて
8 テリトリーを記述する―正道だけを通る
9 風景の解凍
10 死したる身体が積み上がる
11 民族“人民”生成論ethnogenesesへ回帰する
12 いくつかのかなり奇妙な戦い
13 すべての方向に拡散せよ
14 さらなる読書の提案
著者等紹介
ラトゥール,ブルーノ[ラトゥール,ブルーノ] [Latour,Bruno]
1947‐2022、フランスの科学人類学者・哲学者。2013年にホルベア賞、2021年に京都賞を受賞。サイエンススタディーズの研究者、アクターネットワーク理論(ANT。人間と非人間を同位の「行為するもの」として扱う新たな社会理論)の創始者の一人、ユニークな近代論者(主体と客体、自然と文化という二元論を土台として成り立つ近代文明を批判的に検討)として著名。彼が近年手がけた、「気候の危機に対する近代人特有の理解は人類の危機対応をいかに誤らせるか」についての研究は世界的な反響を呼んでいる
川村久美子[カワムラクミコ]
コーネル大学にて社会学修士号、東京都立大学にて心理学博士号取得。東京都市大学メディア情報学部教授を経て、同大学名誉教授。専門は環境社会学、科学社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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