出版社内容情報
世界人口の7割が独裁国・地域に住む現在、自由主義・民主主義の行く末は何処か?
リベラルな平等主義の意義を再説する古典的名著
本書はリベラリズムの理論を語り直し、擁護しようとする。なぜ改めてリベラリズムを擁護する必要があるのだろうか。著者は、外的脅威への恐怖があらゆる政治的争点を棚上げにしている世界において、〈リベラルな平等主義〉の原理を再提示し、政治権力や多数派の世論による専制に抗する規範的な理由付けの力を取り戻すことがかつてなく重要であると述べる。この立場の核心には、最も価値をもつのは個人の人格であり、そのことは万人の人格が等しく尊敬を受けることによって具体化されなければならないという思想がある。
コロナ禍や侵略戦争、分断や格差が他者に対する憎悪と恐怖を掻き立てている今日、リベラルな平等主義の理論的擁護の重要性はいっそう増している。すべての人格は〈平等な配慮と尊敬〉をもって扱われなければならないという理念は、個人の道徳的価値と現代の民主的な社会における多元性を両立させることのできる政治原理と政治秩序構想の探究を産み出してきた。それが、ジョン・ロールズの『正義論』以来50年にわたって展開されてきた政治的リベラリズムの政治哲学である。
本書は、その淵源をJ・S・ミルやカントに辿ると同時に、もっと最近の政治理論の展開から理論的な強化を図ってゆく。同時に、この間につきつけられてきた批判、例えばコミュニタリアニズムや多文化主義からの批判、あるいはグローバル化という観点からの批判に真剣に応答しようとする。そのようにして著者は、リベラルな平等主義の意義と生命力を再確認することになる。
20世紀終盤、ベルリンの壁の崩壊とともに謳われたリベラリズムの勝利は、自由とデモクラシーが危機におかれているいま、歴史の「終わり」(end)ではなく、歴史の「目的」(end)であったこと、そしてリベラリズムを擁護する規範的な理論がなお必要であることを本書は教えてくれる。(さとう・せいし 早稲田大学名誉教授)
内容説明
リベラルな価値を賦活する理論の力。「リベラリズムと不安定な成果」をたゆまず語り直し、支持し続けることの意味を追求する、現代政治理論の挑戦。
目次
第1章 序論―リベラリズムとは何か
第2章 リベラルな平等の源泉
第3章 社会契約論
第4章 リベラリズムと自由
第5章 リベラリズムと平等
第6章 政治的リベラリズムはどのように政治的なのか?
第7章 偽りの中立性と自民族中心主義
第8章 リベラリズム、国家、そしてその先にあるもの
著者等紹介
ケリー,ポール[ケリー,ポール] [Kelly,Paul]
1962年生まれ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授。専門は政治理論。ベンサムや功利主義の研究から出発し、英国の政治思想の伝統をふまえ、ロールズ以後の米国を中心とした現代政治理論の展開を視野に入れた多くの著作を発表
佐藤正志[サトウセイシ]
1948年生まれ。早稲田大学政治経済学術院教授等を経て早稲田大学名誉教授。専門は政治理論史・政治哲学、特にヨーロッパ初期近代の政治思想史
山岡龍一[ヤマオカリュウイチ]
1963年生まれ。放送大学教授。Ph.D(ロンドン大学)。専門は政治理論・政治思想史、特に17世紀イングランドの政治思想と、リベラリズムやリアリズムをはじめとする現代の政治理論
隠岐理貴[オキマサタカ]
1982年生まれ。Dr.phil.(テュービンゲン大学)。専門は近代哲学。日本学術振興会特別研究員(PD)、テュービンゲン大学非常勤講師などを経て、現在は独立研究者
石川涼子[イシカワリョウコ]
1976年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程修了。立命館大学国際教育推進機構准教授。博士(政治学)
田中将人[タナカマサト]
1982年生まれ。岡山商科大学法学部准教授。早稲田大学政治学研究科修了。博士(政治学)
森達也[モリタツヤ]
1974年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(政治学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bevel
ラピスラズリ