出版社内容情報
本書は、ガンを経験し、克服したデンマーク人二五人が自らの体験を綴ったものであり、デンマークで出版されて大反響を呼んだ《悲しみと喪失》シリーズからの邦訳第三弾である。
四歳で白血病を発症した女の子、結婚して妊娠を待ち望んでいるときに乳ガンを宣告された女性、公演ツアーの最中に精巣ガンを告げられた俳優、七歳の娘に自分の子宮頸ガンを告白しなければならなかった母親、二二歳で卵巣ガンにかかって、子どもを産めなくなった女性……。著者二五人の年齢も置かれている立場も様々である。デンマーク代表として活躍したサッカー選手エッベ・サンドも著者の一人に名を連ねており、話題を呼んだ。
本書の価値は、デンマーク人が生活者の目線から、自分の体験を極めて率直に、内面にまで踏み込んで語るところにある。ガンの診断を受け、壮絶な治療を経験した著者たちの言葉は重く、説得力がある。その語りのなかでは、人間のもつ強さだけでなく、弱さも露呈する。自分の生命がこの先どうなるのか分からないという不安と絶望。何としてでも健康と幸せを取り戻したいという強い意志。そして、ガンを経験することによって、あたりまえの日常に幸せを感じるようになったという言葉に希望が見えてくる。
高福祉国家として知られるデンマークの充実した社会保障制度については、日本でもよく知られるようになってきたが、その社会に暮らす人々がどのような思いを抱えてどのように生きているかについては、あまり伝えられていない。良い面ばかりが取り上げられがちな北欧の国デンマークに生きる人々の心情を、悲しみや苦しみも含めてありのままに伝える本書が、日本における北欧理解の深化に役立てばと思う。(いしぐろ・のぶ 大阪大学言語文化研究科准教授)
【著者紹介】
Birgit MADSEN(1954~)長年教員を勤めたのち、2001年からフリーの編集者に。子どもや家族に関する本を多数手がける。
内容説明
4歳で白血病を発症した女の子、公演ツアーの最中に精巣ガンを告げられた俳優、7歳の娘に子宮頚ガンを告白しなければならなかった母親、22歳で卵巣ガンにかかって、子どもを産めなくなった女性…。元デンマーク代表サッカー選手の手記も掲載。デンマークで大反響を呼んだ「悲しみと喪失のシリーズ」からの邦訳第3弾。
目次
恥じる気持ち
再び光のもとへ
失うものより得たものが多い
愛煙家
ガンで亡くなった家族はいない
ただの咳だと思っていた
支え合い
最大の勝利
いつも明るい気持ちで
豊かな人生〔ほか〕
著者等紹介
マスン,ビアギト[マスン,ビアギト] [Madsen,Birgit]
1954年生まれ。出版コンサルタント
オーレスン,ピーダ[オーレスン,ピーダ] [Olesen,Peter]
1946年生まれ。ジャーナリスト、作家。建築文化に関する著書多数
ビェアアグラウ,ヘンレク[ビェアアグラウ,ヘンレク] [Bjerregrav,Henrik]
1962年生まれ。写真家。45冊以上の本の写真を手がける
石黒暢[イシグロノブ]
大阪外国語大学外国語学部デンマーク語・スウェーデン語学科卒業。同志社大学大学院文学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了。現在、大阪大学言語文化研究科准教授。専門は高齢者福祉論、福祉国家論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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