出版社内容情報
日本に住むことに、居心地の悪さを感じた。なにかに押さえつけられ、足払いを食らっているようだった。なにが起きているのか、どうしてそんなふうに感じるのかはよくわからなかった。2000年前後のことである。「失われた10年」とか、「閉塞感」とかといった曖昧な言葉が、巷にはあふれていた。
とりあえずぼくは日本から逃げ出すことにした。家族を連れ、海外に移り住んだのである。世の中がなにひとつ解決できないのだから、そうするしか思いつかなかった。仕事のことも、家族のことも、子どもの教育のことも、のしかかる問題をすべてチャラにしてしまいたかった。経験者の友人たちは「とにかく『日本人ムラ』にだけは気をつけろ」という警告を添えて、ぼくら家族を見送った。
移住先に選んだのは、チェコのプラハ。二度、訪れたことがあるという、ただそれだけの理由だった。別にあてなどなにもなかった。資産があるわけでもない。言葉ができるわけでもない。外国に住むといっても、旅行しているにすぎないという気軽さと、亡命してきたなどという重たい気持ちが同居した。それがすべてのはじまりだった。
それからというもの、よたよたと生きながらも、本当にいろいろなことがあった。よいこともあれば、悪いこともあった。そのたびに、なにか根源的なものが突きつけられた。生きるとはなにか。家族とはなにか。社会とはなにか。国とはなにか。答えのない問いが浮かんでは消えた。それは日本に住んでいる限り、これまで考えなくてもすむものだった。
本書でぼくは外国で暮らすことで経験したことを時間軸に沿って追いながら、世界に対する考え方や感じ方が少しずつ変わっていく様子をとらえようとした。ぼくはもちろん、家族(妻と二人の子ども)も変化し、進化していく。その果てにいったいなにがあるのか。国を棄て、日本人をやめることで、いつしかぼくは楽に生きられるようになっていた。(ますだ・ゆきひろ)
【著者紹介】
1963年生まれ。フリーの編集者/記者。現在はスロバキアに住み、日本とヨーロッパを行き来して取材をおこなっている。主な著作に『プラハのシュタイナー学校』(白水社)、『ザルツブルクとチロル アルプスの山と街を歩く』(ダイヤモンド社)などがある。
内容説明
ニッポンを離れてみたらいろんなものが剥がれおちた。海外生活10年の記者がおくる行きつ戻りつ・悲喜交々の日本脱出記。
目次
第1章 行き詰まり
第2章 新世界のとば口で
第3章 「外国人」の現実
第4章 もういちど、脱出
第5章 引きこもり
第6章 見えてきたもの
エピローグ―ここではない、どこかへ
著者等紹介
増田幸弘[マスダユキヒロ]
フリー編集者・記者。1963年東京生まれ、早稲田大学第一文学部卒業。スロヴァキアを拠点に、日本とヨーロッパを行き来して取材をおこなう(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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