内容説明
ハーフライフ(半減の生)を乗り超え、人間としての明晰さを保ち続けていくために。大震災の記憶が私たちの心奥に刻みこむもの。自然と文明、人間の生と先人の思索…、震災を生きたあるフランス人作家の手記。
目次
第1部 扇の要
第2部 海から救いあげた物語
第3部 ハーフライフ(半減の生)、使用法
著者等紹介
フェリエ,ミカエル[フェリエ,ミカエル] [Ferrier,Micha¨el]
フランス、ストラスブール生まれ。パリ・ソルボンヌ大学博士課程修了(文学博士)。1992年から日本在住。作家、中央大学教授。NHK教育テレビ「フランス語会話」元講師。『東京、夜明けの小さなポートレート』(ガリマール出版、2005年、アジア文学賞)、『幽霊を憐れむ歌』(ガリマール出版、2011年、ポルト・ドレ賞)などの著作をフランスで発表。『フクシマ・ノート―忘れない、災禍の物語』は2012年のエドゥアール・グリッサン賞を受賞
義江真木子[ヨシエマキコ]
東京大学人文科学研究科修士課程(仏語仏文科)修了。フランス政府給費留学生としてパリ第3大学に留学。パリ在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
11
M新刊棚。2012年初出。「三年を経ずして『フクシマ』はすでに忘れられた」(1頁)。喉元過ぎれば熱さを忘れる。厳しい指摘。被災者おひとりおひとりへの配慮が、年末年始に海外旅行に行く勝ち組にはわからない。絆が問われる。僕は、昨日の口述試験では3・11のカードを選んだ。訥々と話したが、栄村の話も故郷や仕事にも結び付けて話せたのはよかった。個人が問われるとき、ふるさとの価値は計り知れない。今後、直下型地震が東京を襲う。富士山が爆発。そんな未来も予見される(70頁)。想像を絶する。弥縫策の原発策と揶揄(72頁)。2013/12/09
takao
1
ふむ2018/02/18
K
0
どことなく小説のような文体、でも事実やそれに対する自らの感情をとらえるきびしい視線が印象に残る。2017/06/06
すむるとろん
0
序文に記された言葉に胸を突き刺されるようだった。私たちは忘れた。終わってもいないものをもう忘れた。タイトルのフクシマの含意については訳者後書きに詳しいが、記されているのはあの災害全体。原発に関してはハーフライフと題された第Ⅲ部にほぼ集中する。ペダンチックな感もある文学の引用には若干の抵抗感を覚える箇所もあるが、個人的には非常に心に残る1冊だった。結局、答えはひとつなのに何故私たちは馴致させられることを望みながら生きている、ような姿を晒してるんだろう。原発作業員の言葉が心を貫く。2014/06/25
kskkz
0
目にする震災・原発報道全てに嫌気が差していた。大事なことを伝えているようだが結局中身には何も書かれていない。それでも情報を求めてしまう虚しさ。眉間にシワを寄せて記事をクリックし、読んだ後は一丁前に東電批判や政府批判を受売りで行う。そんな人は多いと思う。そういった国内の報道とは異なる文脈で書かれた情報を得たいと思い本書を手に取った。エスプリが効いた文章はこれまで得てきた震災情報とは違い軽やかなユーモアを感じさせそのぶん事態の深刻さを際立たせる。読み終えた直後だがもう一度読もうと思う。また書きます。2014/04/02