出版社内容情報
企業の数が減り続けている。1986年には、個人企業と会社企業を合わせて約540万社あったのが、2009年には約420万社にまで減ってしまった。1986年以降、廃業率が開業率を上回るようになった結果である。
企業の経営者も人間であるかぎり、永久に経営できるわけではない。新たな経営者に引き継いでいくことにより事業が続いていく。しかし、何らかの事情で後継者がみつからなかった場合、その企業は廃業するか、身売りするかという選択を迫られることになる。とはいえ、中小企業の場合、身売りしようにもなかなか買い手は見つからず、廃業してしまうということが少なくないだろう。
このような事業承継の問題は古くから認識されてきた問題であるが、2008年に制定された「中小企業経営承継円滑化法」によって脚光を浴びることとなった。
この事業承継を、何代にもわたって繰り返している企業が存在する。いわゆる老舗【しにせ】企業である。今、その老舗企業に注目が集まっている。事業承継を成功裏に繰り返してきた過程で、守り受け継がれてきた伝統があるのは言うまでもないだろう。と同時に、新しい事業に果敢に挑む革新性や、危機に対する卓越した対応力なしには、激動の歴史のなかで生き残っていくことはできなかっただろう。
古都として1200年の歴史を誇る京都には、言うまでもなく古い企業が多い。京都府では1968(昭和43)年度より、「同一業種で100年以上にわたり堅実に家業の理念を守り、伝統の技術や商法を継承し、他の模範となってきた企業」を「京の老舗」として表彰してきた。2009年度までにこの制度で表彰された企業は1754社に上っている。
本書は、このような京都の老舗企業においてどのように伝統が守られ、そして革新をいかに導入しているのかを、アンケート調査や事例研究で明らかにしたものである。(まつおか・けんじ)
内容説明
地域産業を襲う後継者問題。京都の「老舗企業」の危機対応能力と革新性に、その解決の方途を学ぶ。
目次
第1章 事業承継の経済学
第2章 京都の老舗企業における事業承継と経営革新
第3章 永続繁盛している長寿企業の経営革新と事業承継―しなやかでしたたかな京の老舗から学ぶ
第4章 京都の伝統産業
第5章 次世代から見た地域産業―丹後の伝統産業に関する高校生の意識
第6章 老舗織物産地・丹後の事業承継―新事業への挑戦
第7章 中小企業における事業承継の日中比較
著者等紹介
松岡憲司[マツオカケンジ]
1950年、東京生まれ。神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(経済学)。尾道短期大学、大阪経済大学を経て、1999年より龍谷大学経済学部教授。1997年にコペンハーゲン商科大学客員教授。専門は産業組織論、中小企業論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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