出版社内容情報
超高齢社会」の時代を迎え、わたしたちはいま、誰もが生涯を通じて生きがいと働きがいを持てるような産業や社会の新たな仕組みを切実に必要としている。それはおそらく、従来の経済至上主義の価値観ではなく、生産・生活・コミュニティの最小単位である「地域」からの発想に基づく仕組みでなければならないだろう。この課題は、東日本大震災を経ていっそう先鋭に浮上していると思われる。
そのようななかで近年、人口減少と高齢化が最も顕著に進行する中山間地域の農山村で、創造的な営みが多くみられるようになってきた。そこでは人びとが条件不利を乗り越え、限られた資源を生かし、創意工夫で「小さな産業」を創出しつつある。
本書は、そうした中山間地域のなかでも先端を走るエリアとして、全国で最も人口減少率・高齢化率の高い中国山地に着目し、その農山村の現場から「地域の創造性」を考察するものである。具体的には、地域自治組織、集落営農、女性起業、地域に根差した社会的企業などの取り組みをとりあげる。
人口が減り、農地や山が荒れ、産業が停滞し、生活基盤や人びとのつながりが衰退していく状況のもとで、地域で誇りを持って生きていくためにはどうすればよいか―中国山地ではこの問いが突きつめられたことで、自立のための新しい価値が模索され、わたしたちの想像を超えるような産業化・自治・コミュニティ再生の独創的な取り組みが生まれているように思われる。その創造性は、「超高齢社会の自立」に向けた新たなビジョンを必要としている現代社会に、多くの示唆を与えてくれるはずである。(まつなが・けいこ)
内容説明
産業・自治・コミュニティを知恵と工夫で創りだす。全国で最も人口減少率・高齢化率が高い中国山地の「自立」に向けた独創的で豊かな営みに、「超高齢・成熟・脱成長の時代」の指針を探る。
目次
序章 超高齢社会の地域の自立
第1章 「地域自治組織」にみる新たな地域コミュニティ
第2章 「集落営農」にみる地域ビジネスと地域扶助
第3章 農山村を引っ張る「女性起業」
第4章 「地域型社会的企業」の台頭―住民出資で自立に向かう
第5章 「産業福祉」という発想―道の駅と農産物直売所の進化
第6章 地域産業政策の未来と自治体の役割
終章 地域で仕事を創造する
著者等紹介
松永桂子[マツナガケイコ]
大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授。1975年京都市生まれ。大阪市立大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得。博士(経済学)。島根県立大学講師、准教授を経て、2011年から現職。専門は地域産業論、地域社会経済(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。