出版社内容情報
憩い、食、出会いの場として存在感を高める「道の駅」。全国10地域の取り組みを通じてその可能性をさぐる。
現在、全国の至るところに「道の駅」が設置され、幅広く利用されるようになっている。その数はいまや950ヶ所を超える。この「道の駅」の基本的な機能は、道路利用者のための「休憩機能」、道路利用者や地域の人びとのための「情報発信機能」、地域の町どうしが連携する「地域の連携機能」の三つとされる。より具体的には、24時間利用できる駐車場・トイレ・電話などの設備のほか、地域の情報センター、レストラン、土産物屋、農産物の直売所などが基本的構成要素となってきている。以前は高速道路のサービスエリアに限りなく似ていたが、その後経験を深めるに従い、地域の特色が強く表現されるものになってきた。高速道路のサービスエリアは通過客の休憩所に過ぎず、地域との接点は乏しい。これに対して「道の駅」は、地域への「入り口」なのである。この点を象徴するのが、農産物の直売や郷土の伝統食・伝統菓子の提供であろう。そこには地域の人びとが登場し、「道の駅」に停泊する人びとと深い交流を開始していく。地元の人びととふれあい、地元の味を楽しむことができる「道の駅」は、幹線道路をただ通過するだけだったはずの道路利用者を惹きつけ、地域に新たな可能性をもたらしているのである。「道の駅」は、道路利用者の利便性の改善から出発して、現在では利用者と地域との「出会いの場」、さらには地域の人びとが「勇気づけられる場」としてその存在感を高めている。これまで私たちは、農村や中山間地域の活性化を促すものとして、「農産物直売所」「農産物加工」「農村レストラン」に注目してきたが、近年、「道の駅」がそれらの総合的な受け皿となってきた。「道の駅」は幹線道路沿いに設置される場合が多く、集客力に優れている。そこで多くの出会いが起こり、人びとは新たな認識を得ていく。「道の駅」は次第に進化し、地域産業振興と交流の拠点としての意味を強めてきた。この特徴は今後もさらに深められていくだろう。
本書では、こうした点を意識しつつ、「道の駅」とは何か、地域産業振興とどのように関わっていくのか、そしてこれからどのような方向に向かうのかをみていく。常に進化している「道の駅」は、農山村や中山間地域ばかりでなく、日本社会全体の明日に深く希望を与えるものになっているのである。(編者 関 満博)
内容説明
地元の“顔”として親しまれている「道の駅」はいまや、自治体間連携や産業振興の要ともなりつつある。各地の人びとの「思い」のこもった事例からその進化/深化を跡づけ、産業戦略としての可能性を抽出する。
目次
「道の駅」それは地域産業振興と交流の拠点
第1部 地域の産業・交流拠点として進化する「道の駅」(高知県四万十町/四万十町スタイルを目指して―「あぐり窪川」の挑戦;福岡県宗像市/地元の食材にこだわる地域産業の拠点―道の駅「むなかた」;栃木県小山市/地産地消とブランド発信を目指して推進―地域の「顔」として総力を結集「思川」;群馬県川場村/村の自立を目指す「農業プラス観光」路線の集大成―村のタウンサイトとして機能する「川場田園プラザ」)
第2部 地域の特性を深める「道の駅」(北海道深川市/お米と地場産品のこだわりが人気を呼ぶ―五つの仕掛けが潜む「ライスランドふかがわ」;広島県北広島町/町の地域振興・農業振興の拠点―公設公営の道の駅「舞ロードIC千代田」;兵庫県猪名川町/田園集落とニュータウンをつなぐまちづくりの拠点―大都市近郊型の道の駅「いながわ」)
第3部 新たな局面に立つ「道の駅」(新潟県新潟市(旧豊栄市)/全国初の一般国道パーキングエリアとして設置―道の駅「発祥の地」とされる「豊栄」
岩手県遠野市/年間百万人を集める民話の里の道の駅―地域の観光・産業拠点「遠野風の丘」
島根県飯南町/高速道路の新規開通と道の駅―沿線に展開する「頓原」と「赤来高原」)
地域産業振興と「道の駅」のこれから
著者等紹介
関満博[セキミツヒロ]
1948年富山県生まれ。1976年成城大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。現在、明星大学経済学部教授、一橋大学名誉教授。博士(経済学)
酒本宏[サケモトヒロシ]
1962年北海道生まれ。1985年北見工業大学土木工学科卒業。現在、(株)KITABA代表取締役社長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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