出版社内容情報
「魔女」に集約的に表れた西欧近世社会の他者認識を独創的視点から読み解き、「近代」誕生の意味を探る
〈魔女〉と〈メランコリー〉。この二つの言葉の組み合わせを奇異に感じる読者は多いのではないだろうか。しかし実は、この二つは西欧近世社会における他者イメージの核心にふれるテーマなのだ。かつて西欧人は、どのような存在を「我々とは異なるもの=他者」とみなしていたのか? 西欧の社会・文化から大きな影響を受けてきた私達にとって、グローバル化がいや増す現代、この問いかけは新たな意味をもって迫ってくる。今から400~500年前、西欧では魔女裁判が猖獗をきわめた。一説では、約4万人が火刑台の炎の中に消えたという。その大部分は女性である。魔女裁判という歴史的現象に向き合うとき、私達は次のような根源的な問題に直面する。魔女とはそもそも何(誰)だったのか? なぜ魔女裁判はその時代に起こったのか?本書は、この根源的問題を、西欧近世社会における「他者」の意味を問い直すことで解明しようとするものである。言い換えれば、魔女という存在を通して、西欧社会の他者認識のありようを探ろうとする試みとも言える。〈メランコリー〉は、この探究を進める上で鍵となる概念である。西欧近世社会において、魔女の存在が近代医学成立前の正統医学=四体液病理説のもとで理解されていたことは、一般にはあまり知られていない。魔女は、血液・黄胆汁・黒胆汁・粘液の四体液のうち黒胆汁を多量にもつため、「メランコリーに冒された存在」だと考えられていたのである。本書では、魔女という表象が、メランコリーという医学概念を回路として、同時代の西欧社会で問題化していた別の他者=「貧民」と「インディオ」の要素を融合していく過程、そしてその表象が時代と社会の推移の中で解体されていく過程を、16世紀後半から17世紀前半の様々な知識人の言説を分析することによって明らかにする。〈魔女とメランコリー〉という問題設定によって、私達は西欧人の他者イメージの内実とその変容過程を垣間見ることができるだろう。さらにそこから、魔女という他者イメージの消長生成と表裏一体の関係にある重大な世界史的事態、すなわち「西欧近代の誕生」の本質の一端が浮かび上がってくるだろう。(著者 黒川 正剛)
内容説明
悪魔学論文、医学思想史、社会政策史、メランコリー解釈史の渉猟をつうじて魔女裁判論争の要諦を抽出し、「魔女像」に付託された西欧的人間観の核心に迫る。西欧中・近世史の視座から「西欧近代」を読解する意欲作。
目次
第1章 古代から近世にかけてのメランコリー観
第2章 魔女はメランコリーか?
第3章 魔女という他者
第4章 魔女像の変奏
第5章 変容する魔女像
第6章 近代へ―「他者としての魔女」像の解体
著者等紹介
黒川正剛[クロカワマサタケ]
1970年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、太成学院大学人間学部准教授。専門は西洋中・近世史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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