出版社内容情報
民営企業×外資企業の高度化するスパイラルな産業集積モデル」を解明。
1980年代中頃、開発経済学や地域産業論の研究者の間で、中国の「郷鎮企業」*が話題になり始めた。特に上海郊外から蘇州、無錫といった蘇南地域が最も活発であり、後に「蘇南モデル郷鎮企業」という名称で世界的に知られていく。その頃の中国の人びとはまだ貧しく、噂の郷鎮企業は簡易な日用品生産に従事していた。だが、お目にかかる関係者どなたの目も輝き、「明日」を語ってくれた。これは何かが起こる、と深く感じさせられたものであった。そして、90年代の中国は外資企業の大量進出を促し、劇的な発展を遂げた。さらに2000年代に入ってからの無錫は、民営企業の発展と日系を中心とした外資企業の集積が同時に進み、中国地域産業展開に新たな可能性を導き出している。それは「民営企業×外資企業の高度化するスパイラルな産業集積モデル」とでも言うことができる。本書は「無錫」に焦点を当て、80年代以降の「現場」の日々を織り込み、「郷鎮企業」とは何であったのか、日系企業は長江デルタの中でもなぜ無錫に向かったのか、郷鎮企業から転じた民営企業はどこに向かおうとしているのか、そして、無錫を舞台にして興味深いものになってきた新たな産業集積がどこに向かい、何を生み出そうとしているのかに注目していきたいと思う。
* 中国では1950年代後半の「公私合営」により私営企業が一掃され、国営企業、集体企業(集団企業)へと統合された。しかし70年代には、一部農村地域で社隊企業(人民公社内の企業)が生まれ、またその影に隠れて事実上の私営企業が残り、活動を続けていたことが報告されている。これらの企業が改革・開放後の84年に「郷鎮企業」と改称され、中国農村の「希望の星」とされていくことになる。
内容説明
1980年、中国農村工業化の「希望の星」と言われた蘇南モデル郷鎮企業は、90年代以降の急速な民営化・外資の大量進出・熾烈な階層分解を経て新たな発展段階に入りつつある。「国内民営企業×外資企業」の高度化するスパイラルな産業集積モデルを解明し、進出日本企業の針路を展望する。
目次
郷鎮企業の故郷から、中国を代表する産業都市へ
第1部 無錫の産業発展の基礎的条件(無錫の近代工業化の歩み;無錫の産業発展の輪郭 ほか)
第2部 無錫の民営企業の現在(郷鎮企業から民営企業に向かう無錫の企業;民営化後に劇的な発展を遂げた郷鎮企業 ほか)
第3部 無錫に展開する日本企業(低コスト生産で日本に戻す;中国市場に向かう大手企業 ほか)
第4部 補論/無錫産業調査のトピックス(1993年/無錫産業の発展動向;1993年/当時の蘇南の企業 ほか)
著者等紹介
関満博[セキミツヒロ]
1948年富山県生まれ。1976年成城大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、一橋大学大学院商学研究科教授。博士(経済学)。受賞:1984年第9回中小企業研究奨励賞受賞。1994年第34回エコノミスト賞。1997年第19回サントリー学芸賞。1998年第14回大平正芳記念賞特別賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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