出版社内容情報
中国が経済改革、対外開放に踏み出したのは一九七八年の末、以来、外資企業の中国進出の経験は四半世紀を重ねている。九〇年代後半の頃までの日本企業の進出の多くは、日本の人件費上昇を避けることを目的に、「安くて豊富な労働力」を求めるものであった。だが、九〇年代の後半になると「市場」としての中国への関心が高まっていく。
その結果、現在の日本企業の中国進出の地域的な配置は、日本への「持ち帰り型輸出生産拠点」形成を意図する場合は大連、世界への「輸出拠点」を形成する場合には珠江デルタ、そして、「中国市場」を視野に入れる場合は上海を軸とした長江デルタ、という配置になってきたように見える。
ところで、このような経験を重ねてきた日本企業も二〇〇〇年代に入り大きな転換点を迎えている。その変化を促している最大の要因は、当然、中国が劇的に変わってきたところにある。人件費水準は上がり、「安くて豊富な労働力」の国であったはずの中国は、「世界の工場」「世界の市場」として新たな顔を見せるものになっている。
以上のような新たな枠組みの中で、中国進出を行う日本の中堅・中小企業は、現在、どのような状況にあるのか、中国の次の時代をどのように見ているのかが問われている。
このような点を意識し、本書は大きく三つのエリアに注目した。一つは日本企業進出の経験の深い「大連」、二つ目は現在の中国でも最もダイナミックな動きを見せている「珠江デルタ」、三つ目は中国経済の中心となってきた上海などの「長江デルタ」である。
この数年、繰り返し訪問を重ね、新たな発見に遭遇してきた。この時代を書き残さなくてはならないという責任を痛感する旅でもあった。したがって、本書は大きな転換点に直面している二〇〇〇年代の中国進出日本中堅・中小企業の姿を「同時代の証言」として書き残し、その意味するところ、そして、その次の時代を見通すことに主眼を置いている。(せき・みつひろ)
内容説明
次の時代をどのように見通すか。外資企業の中国進出開始から四半世紀、巨大な格差を抱えながら繁栄を謳歌する中国で2000年代以降の数年を日本の中堅・中小企業はいかに歩んだか。100を超える日系企業訪問をもとに「東アジア」の新たな関係を眺望する。“現場”の息吹をとらえた「同時代の証言」、20年の総括と新たな展望。
目次
序章 進出の諸類型と分析の視点
第1章 日本の中堅・中小企業の中国進出
第2章 大連/日本企業進出の深い経験
第3章 長江デルタ/壮大な産業集積の中の日本企業
第4章 珠江デルタ/多様性の中の新たな可能性
第5章 産業集積と現地化から見た進出中小企業の諸問題
第6章 中国進出中堅・中小企業のマーケティング
終章 中国進出の次の課題
著者等紹介
関満博[セキミツヒロ]
1948年富山県生まれ。1976年成城大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、一橋大学大学院商学研究科教授、博士(経済学)。1984年第9回中小企業研究奨励賞特賞、1994年第34回エコノミスト賞、1997年第19回サントリー学芸賞、1998年第14回大平正芳記念賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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