出版社内容情報
一九九七年の初版刊行以来、本書は多くの読者を得て、ラテンアメリカ地域研究の入門書として定着してきました。このたび改訂版を出すこととなったのは、九〇年代末以降現在までにラテンアメリカに起きた変化が極めて大きく、情報の更新が必要となっていたためです。今回加筆された部分の多くはこの八年間に生じた新たな状況の紹介と解説に当てられています。また歴史的な事象や社会の特徴に関する解説などは生かして全体のバランスをとりながら、旧版と同じ著者一〇名がそれぞれ担当する章に手を加えて、二一世紀初頭の激動するラテンアメリカ事情を総合的に理解するための情報と手段を盛り込みました。
九〇年代のラテンアメリカ諸国は、世界を席捲したネオリベラリズム(新自由主義)の大きなうねりに巻き込まれ、旧版が執筆された時期には想像もできなかったことが各国で起こりました。七一年間一度もクーデターを経験せず、一党支配体制がつづいたメキシコにおいて、二〇〇〇年の大統領選挙で野党が勝ったことはその一例です。また新自由主義経済政策が主流を占める中で、ベネズエラやボリビアのように独自の政策を追求する国々の台頭も注目されています。このように、二一世紀初頭のラテンアメリカの社会状況はいっそう複雑になっていますが、同時に成熟したラテン文化や新しい芸術活動などの魅力もより高まっています。この〈多様化しながら成熟するラテンアメリカ〉を総合的かつ体系的に学ぶ糸口として、複雑な状況を簡潔に整理・解説している点が、地域研究入門書としての本書の特徴といえます。
ラテンアメリカは南北アメリカ大陸とカリブ海域を含む広大で多様な地域からなり、現在、三三の独立国と一一の非独立領土が存在しています。資源に恵まれ、世界の中進国の地位を占めるラテンアメリカ諸国の多くは、これまでも常にその未来が期待された国々でしたが、二一世紀こそ〈ラテンアメリカの世紀〉であるとされる現在、新しく内容の刷新をはかった本書は、この地域をより良く理解する手助けとなることでしょう。(くにもと・いよ)
内容説明
90年代末以降の劇約な変化と最新の研究動向をふまえ、情報を刷新。第一線の研究者10名が結集したラテンアメリカ研究入門書の決定版。
目次
ラテンアメリカ地域の特徴
ラテンアメリカの歴史
ラテンアメリカの政治
ラテンアメリカの経済
ラテンアメリカの社会
ラテンアメリカの文化
メキシコ
中米地域
カリブ海地域
アンデス諸国
ラプラタ地域
ブラジル
ラテンアメリカと日本
ラテンアメリカを学ぶために
著者等紹介
国本伊代[クニモトイヨ]
中央大学商学部教授。歴史学・ラテンアメリカ近現代史専攻
中川文雄[ナカガワフミオ]
城西国際大学人文学部教授。筑波大学名誉教授。ラテンアメリカ地域研究、比較文化論専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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