出版社内容情報
人々の生活の場・地域・文化に基礎を置く「もうひとつの地球村」を構築するために
アメリカに主導されたグローバリゼーションの波がアメリカの単独行動主義と結びつき、それに反発するテロリズムが今世紀はじめの世界の特徴として浮かび上がってきている。こうした両極端のなかで、人々の日常性・生活に基礎を置き、コミュニティに基礎を置き、地域に基礎を置きながら、グローバリゼーションの時代の枠組みのなかで、主体的に、したたかに生きるための、生活の場・地域に発する社会・政治・経済・文化のあるべき姿を探る。それが本書の執筆者たちの意図である。「もうひとつの地球村」とは、世界の農村および都市において、ローカルの各地で起こっている地域おこしを原点に、「下からのグローバリゼーション」を模索するキーワードである。「もうひとつの地球村」のコミュニティは、開発途上国でもますます都市化が進んできていることに鑑み、都市を含めて考える。また、今日のコミュニティは、町内会・自治会のような地縁的結びつきだけではなく、NGO/NPO(非政府組織/非営利組織)の台頭によってより大きく特徴付けられる。さらに、世界的な地方分権の流れのなかで、コミュニティ・地域の運営は「非政府組織と地方政府の協働による相乗効果=シナジー(NGO-GO Synergy)」という形で、地方政府や地域の企業をも参加者として引き入れるものになっており、また、地方政府も世界的な政府の財政難のなかで、市民諸団体との協働による統治(協治)という方向に動いている点を組み込んで、本書は展開されている。そのような「もうひとつの地球村」を構築するにあたって柱となるものが文化である。「多様な文化・文明の共存でこそ地球村はよみがえる」という発想で、「もうひとつの地球村」の文化論を展開できないかという模索である。ナイジェリアの慣習法を組み込んだ多元的裁判制度や、カリブ世界におけるヨーロッパ、アフリカ系、インド系、中国系が混交する社会での「日常を異化し(外に出ることで)、再び回帰することによって日常を客観化する」といった議論は、そうした試みの例である。
編者 片岡幸彦 羽衣国際大学副学長退職後、現在国立ベトナム大学客員教授。異文化関係論専攻。木村宏恒 名古屋大学大学院国際開発研究科教授。開発政治学、国際政治学専攻。松本祥志 札幌学院大学教授。国際法、アフリカ法専攻。
目次
「もうひとつの地球村」―私たちのためのもうひとつの世界をつくるために
第1部 多様な地域から発信する「もうひとつの地球村」構想(アメリカ版グローバリゼーションの矛盾と地球村版グローバリゼーションの展望;巨大国家から補完性政府へ―「政府の役割」の大変動;都市コミュニティの再生と地域協働の創造;コミュニティ・ビジネスの発展―地域に立脚した支えあう社会へ ほか)
第2部 「もうひとつの地球村」版文化・文明論(「もうひとつの地球村」から見た戦略的文化・文明論;「もうひとつの地球村」をめざす法文化―ナイジェリアの多元的裁判制度;カリブ世界に見る「もうひとつの地球村」―「揺れ」の美学を基盤として;中世における村落共同体・都市共同体の形成から学ぶもの ほか)
著者等紹介
片岡幸彦[カタオカサチヒコ]
1932年、東京生まれ。国立ハノイ人文社会科学大学客員教授。国際NPOグローバルネットワーク21(GN21)代表。国際文化論、異文化関係論、地域研究論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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