出版社内容情報
【化石ゾウが語る古生物学の歴史】マンモスの目を通して古生物学史を語る模索的な試みの中で、真に開拓者的な本である!グールド絶賛!化石が照らし出す科学の想像力の歴史。
これはマンモスについての本ではない。 これから皆さんがお読みになるのは、いまから約40万年前に登場し、およそ1万年前かおそらくはもっと最近に絶滅した、長い褐色の毛に覆われ、どっしりとした体をし、螺旋状の重い牙を持つ巨大な哺乳類の悲壮な物語ではない。 本書においてマンモスは口実、より正確にいえば支柱でしかない。真の主題は古生物学の歴史、化石にもとづいて作られた解釈の体系の歴史である。 本書のめざすところは3世紀以上もの間、この化石が伝説や寓話や、地球の歴史と生命の進化をめぐる物語の中に、どのように封入されてきたかの研究である。古生物学の歴史が、風変わりなある事物に対するまなざしの変化とともに初めて語られるだろう。その事物とは、シベリアの原住民が彼らの言葉で「マモント」と呼んだもの、西欧の学者が彼らの言葉で「形象石」「巨人の骨」「化石一角獣」、エレファス・プリミゲニウス、マンムトゥス・メリディオナリス、コルンビ、インペラトールなどと名付けたものそのものやその巨大な遺物(歯や骨や冷凍肉)だが、このような種々の名称が存在していたという事実は、知の歴史の流れの中に、さまざまな論証の仕方や、さまざまな思考と解釈の体系があったことを示唆している。本書で問題とするのは、地中からとりだされたこの奇妙な遺物が、さまざまな時代と場所、人間の生活と文化においてどのような意味を持っていたかということである。
内容説明
マンモスが照らしだす生命をめぐる物語の系譜、人類の解釈と想像力の歴史。
目次
第1部 イメージ(マンモスの出現)
第2部 神話(聖アウグスティヌスと巨人;ライプニッツの一角獣;あるゾウの鑑定―ロシアの「マモント」とゾウとノアの洪水)
第3部 物語(「驚くべきマムート」とアメリカ国民の誕生;マンモスと「地表の革命」;ヴィクトリア女王時代のマンモス;マンモスと人間)
第4部 シナリオ(系統樹の中のマンモス;アフリカからアラスカへ―マンモスの旅程;マンモスの生と死―絶滅のシナリオ;マンモスのクローニング?―ゾウとコンピューターと分子;結論―古生物学史のために)