出版社内容情報
【専制官僚国家の生成と崩壊】「水力的」という概念から,専制官僚制・全面的権力国家の構造とその系譜を分析。社会主義崩壊に新たな視座を与え,旧ソ連・中国の将来を予見。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
8
四大文明の特殊な発生環境としての大河とそれに対する大規模治水灌漑事業を貫徹させた社会を水力社会と規定し、それら事業に大量の賦役労働を強制する専制政体を描写する。強力な専制政治から経済的特権を獲得した職能官僚制が支配階級となる歴史観を提示。マルクス、エンゲルス、レーニンが扠置いた職能官僚制が持つ専制的支配問題への曖昧さを告発する。唯物史観が提示する奴隷制、農奴制、賃金労働の被支配の史的展開は単純過ぎると批判。1921年には既に革命勢力内の職能官僚制階級をクロンシュタット反乱は問題にしていた。→2024/11/19
Saiid al-Halawi
0
歴史的に封建制を経験しなかった水力社会における強力な官僚的専制政治に関する巨視的な考察。水力社会とは大規模な治水事業(公共事業)を行えるほどの労働集約的な動員力、政治的な求心力を持った社会のこと。欧米以外はほぼ広く、征服以前の中南米でさえこの研究の対象になっている。日本は欧州と近い封建社会が発展したために、アジアに位置していても例外的に水力社会にはあたらないらしい。終章は刊行時の時代を感じさせる内容。解説なし。訳がずさんなのと併せて改訂版が欲しいところ。2012/01/13