内容説明
トマス舟本。キリシタン武士。マカオに渡り癩に感染。日本に帰り、失意の日々を送るが、神の子、天草四郎の一揆勢に招かれ、人として「最後の死に場所」を与えられた瞬間、血肉はわきたち、猛虎に変身する―。しぼり取るだけで農民を生かす知恵も、情熱も欠落した幕閣と大名たち。「われらが先駆して死ぬ以外に農民牢人の救済の道はない―」凛として癩者は先陣に立つ―。綿密な調査。ほとばしる人間愛。大型歴史作家新登場。
著者等紹介
市川和広[イチカワカズヒロ]
昭和32年福岡県福岡市生まれ。平成14年会社役員を退任。退職後、執筆活動に入る。『聖なる癩者―天草島原燃ゆ』でデビュー
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感想・レビュー
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しいたけ
98
幕府によってマカオに追放された伴天連、トマス舟本。癩を病み、日本に送り返される。あらゆる世界から忌み嫌われる、その絶望。腐り、崩れ落ちる身体と激痛。神から離れた彼に手を差し伸べる、土臭い人の中に神を見る。切支丹への残虐な迫害を行うのも、やはり人。天草・島原の乱になだれ込む悲痛な歴史が、実直な文章だからこそ目の前に大写しになる。四郎をそっと支える異形の癩者トマス。四郎の哀しい透明さ。結末は知っている。本当に知りたいのは、そこに至る人の崇高さ。埋もれている歴史がここにある。本屋の平積みでは見つけられない傑作。2019/05/30
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