内容説明
難民問題、児童徴兵、性的暴力、資源搾取…なぜ、紛争を止められなかったのか?紛争の絶えないコンゴ民主共和国で、国連難民高等弁務官のスタッフとして人道支援に携わった著者がコンゴ紛争の現状を語る。
目次
第1章 コンゴとその東部の悲惨さについて
第2章 国内避難民の課題とジレンマ
第3章 一般市民が恐れる人権侵害
第4章 国内避難民と難民の軍事化(武装化)問題
第5章 困難な難民の帰還
第6章 最強の武装勢力との交渉
第7章 コンゴ東部紛争と環境の関係
第8章 「舞台劇」の舞台裏で
第9章 望ましい人道支援のあり方
第10章 紛争要因への対処
あとがき―2008年後半からの政情を振り返って
著者等紹介
米川正子[ヨネカワマサコ]
神戸市生まれ。南アフリカ・ケープタウン大学大学院で修士号取得(国際関係)。国連ボランティアでカンボジア、リベリア、南アフリカ、ソマリア、タンザニアとルワンダで活動後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)職員として、ルワンダ、ケニア、コンゴ民主共和国、ジュネーブ本部で勤務。国際協力機構(JICA)で客員専門員(アフリカの平和構築)、2009年末から宇都宮大学で特任准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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雲をみるひと
10
コンゴ民主共和国東部に関する本。何故、このエリアが現況に置かれているかよくわかる。作者は国連難民高等弁務官事務所駐在員で現地事情に精通しており、難民キャンプでの出来事の記述など迫力がある。一方、地域の一般情報も盛り込まれており、あまり馴染みのない当該地域の理解が深まる。ただし、コンゴ内、及び周辺各国間の高度な政治的要素が絡み合っている当地の情勢が改善される見込みを見出せていないためか、少々スッキリしない読後感だった。2019/07/07
maimai
4
コバルトといった爆弾に使用される地下資源や金銀といった鉱物の為にテロが頻発しているコンゴ。イスラム教過激派集団による残虐なテロの犠牲になるのは民衆であり、少年兵や生物兵器、資産とともにより勢力を増している過激派集団。いまアフリカ大陸では凄惨なテロが発生していて日本もひと事のように考えてはならない。イスラム過激派は貧しい若者を積極的にリクルートする結果、日本人も参加してしまう可能性があるからだ。過去にオウムのようにバイオテロが発生しているが、経済難に見舞われるときはこのテロ組織は非常に危ないのだろうか。2021/01/09
ふぁきべ
4
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の職員としてコンゴで活動していた著者のその目線からコンゴ紛争を説明している。1度目に読んだときの感想と同じく、かなり踏み込んだ内容ではある。今回気づいたのは、この本はUNHCRの目線から書かれていて、MONUC(国連コンゴ監視団)などとは意思疎通が必ずしもとれているとは限らないということ。たとえばコンゴ周辺の太湖地帯での軍事行動をMONUCが支援することで、難民の数が増え、人権問題が発生するから軍事的行動はやめてほしいと書いてあるところなどはそれを如実に表わしている。2014/11/27
テツ
4
副題の『平和以外に何でもある国』がキツい。日本で暮らす僕たちには想像すら難しいコンゴの日常。フィクションの世界に出てきそうな風景も、ゴロゴロと人が死ぬ様子も現実の世界での出来事。どうしたら全てが解決するのかなんてもう誰にも解らず朝から晩まで休まる瞬間のない悲惨な日々が続いて行く。コンゴの紛争は背景が非常に複雑で一読しただけでは掴みきれなかったので近いうちにまた再読したい。2014/01/23
印度 洋一郎
3
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に勤務し、コンゴ民主共和国(旧ザイール)で難民や避難民保護に奔走した日本人女性が現場目線で、当地の問題点を提起する内容。政府機関は機能せず、地元の武装勢力が跋扈し、難民の中にも武装したもの達がいて、一般の難民達を搾取、暴行、略奪、虐殺とリアル・マッドマックスみたいな状態になっているが、著者の視線はその裏にある周辺国や先進国の思惑、「コンゴを無秩序状態にして、資源を効率的に奪う」がもたらす構造そのものにも及んでいる。こうなると、解決は容易ではないのがわかる2016/03/12
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