内容説明
「江戸に多いもの、伊勢屋稲荷に犬の糞」と落語でネタにされるほど、江戸には犬が多かった。犬はいつから増えたのか?なぜ犬の糞は放置されたのか…。さまざまな史料に散らばる犬関連の記述を丹念に拾い集め、江戸時代の犬の生態を精査。時の将軍の意向に翻弄されながらも懸命に生きた犬たちの姿を描く傑作歴史読み物。
目次
第1章 花のお江戸は犬ばかり―「伊勢屋稲荷に犬の糞」の謎
第2章 江戸初期の犬事情(一)―犬食い
第3章 江戸初期の犬事情(二)―御鷹餌犬と鷹狩り
第4章 「犬」―虐げられた言葉
第5章 綱吉登場、増え続ける江戸の犬
第6章 「犬は遠くへ捨てなさい」
第7章 犬たちの文明開化
著者等紹介
仁科邦男[ニシナクニオ]
1948年東京生まれ。70年、早稲田大学政治経済学部卒業後、毎日新聞社入社。下関支局、西部本社報道部、『サンデー毎日』編集部、社会部などを経て2001年、出版担当出版局長。05年から11年まで毎日映画社社長を務める。名もない犬たちが日本人の生活とどのように関わり、その生態がどのように変化してきたか、文献史料をもとに研究を続ける。ヤマザキ動物看護大学で「動物とジャーナリズム」を教える(非常勤講師)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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to boy
27
とにかく犬という文字が出てくるあらゆる文献、資料を読みこなした著者には感嘆しました。江戸初期から幕末、明治初期までの人間と犬とのかかわりをここまで調べて丁寧に記述されています。初期の犬食、鷹餌などから生類憐みの令、鷹狩りの復活、狂犬病など具体的な資料を基に記載。里犬から西洋のような飼い犬に変わっていく明治もまた犬たちにとっては大きな維新だったようです。2019/08/21
nagoyan
11
優。江戸の俚諺「伊勢屋稲荷に犬の糞」が実は江戸の俚諺ではなかったというところから、江戸(と近郊)における犬たちの盛衰を描く。人間に最も近しい動物である犬たちの、それゆえの受難に思いをはせるとき、露伴の「犬一匹可愛がることができない。愛というものの面白みを解せない者くらいあわれなものはない」という言葉が突き刺さる。2019/09/30
もぐたん
3
うちにわんこがいるので、江戸時代にはどんな犬の生活があったのかと思い手に取った。それにしてもまぁ『犬の糞』についてよくここまで調べたなぁ。と感心した。当時の犬は人間や鷹の食べ物になってしまう可哀想な立場だったのね。そういう意味では今は昔に比べれば大切に育てられているわんこが多い時代。友達の保護犬も幸せそうだし。犬にとっても、人にとっても楽しく生きられる世の中でありますように。2024/11/17
はんぶー
2
やはり犬の歴史なので、有力人物のことや事件の歴史と違って、しっかりと書き残されたものではなく、当時の人の日記や、フィクションと思われる断片的な犬の記述を組み合わせて完成されたものだと感じた。他に犬の歴史をここまでまとめてくれた本は見つけられなかったので、ありがたかった。2023/01/29
Arte
2
題名から江戸時代の犬の話かと思ったら、「江戸に多いもの、伊勢屋稲荷に犬の糞」という言い廻しの話と「犬の糞」の話ばかりで、あとで調べたら『伊勢屋稲荷に犬の糞』の文庫化らしい。ひどい(←読む前に帯を読め)。2019/10/09