内容説明
高文試験に合格し朝鮮総督府に行政官として勤務、戦後は李承晩政権下で農林部長官(大臣)をつとめた一人の韓国人が、エリート官僚として日韓両政府に仕えた半生を振り返り、日本語で書いた回想記。
目次
第1章 明滅する星に守られて
第2章 大望なき青雲の志
第3章 目高が鯉に成りはしたが
第4章 深淵上の曲芸
第5章 三度、四度、五度目の国籍変更
第6章 乱世の理、治世の非理
第7章 余録
著者等紹介
任文桓[イムムナン]
1907年、韓国忠清南道生まれ。23年、16歳のときに日本に渡る。同志社中学、旧制第六高等学校(岡山)から東京帝国大学法学部に進む。34年高文行政科試験に合格。35年東京帝大を卒業、拓務省に採用され、朝鮮総督府に出向。京畿道学務課、地方課を経て、38年高等官となり竜仁郡守、40年~42年総督府殖産局産金課、鉱山課勤務。44年同鉄道局書記官、鉱工局機械課兼務、45年江原道鉱工部長に発令されるも終戦。戦後は韓国臨時政府行政研究班員、李承晩政権下で商工部次官、保健部次官、農林部長官を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハルバルミチル
2
朝鮮半島に生まれ、岡山の六高を経て東京帝大を卒業、朝鮮総督府や独立後の韓国でも官僚として働いた任文桓(イム・ムナン)氏の回想録。祖国独立のために統治者の手先となるという、著者のアンビバレントな想いが随所に綴られている。著者曰く「曲芸師の空中ぶらんこ乗り」。また、牛乳配達や人力車で学費を稼いだり、学生寮での悪ガキな暮らしぶりの記述など、当時の苦学生の日記としても面白い。文章や語彙が綺麗で、さすが戦前の知的エリートやなあと。また朝鮮総督府の青年官僚時代の記述も良い。金山閉鎖を巡る補償や警察との上下関係など。2016/08/14
kozawa
1
1975年に一度出た、韓国の元官僚(故人)の回想。十分面白いが、鄭大均序文と強調されているのはなんかけったいだ。こういう人はこういう人なりのバイアスがあって回想録なんだから。自分が見て違和感がないものだけを良質な回想録だなんて序文を書いて何がしたいのだろう。訳注もちょっとレベルが今一なものもあった。2011/07/28
Y_Kuroyanagi
0
20171027ー201711022017/11/02