内容説明
「人生の下劣さに抗する最良の武器は、勇気と、わがままと、忍耐です。勇気は私たちを強くし、わがままは愉しさを生み出し、忍耐は平安を生み出してくれます」(ヘッセ)―小さいときから我が強く、非行少年のレッテルを貼られながらも、自分の好きな道を邁進して世界的な文学者になったヘッセの「わがまま」礼賛の書。戦争や政治の季節の中でも自説を曲げなかった強靱な精神とは。素敵な詩文集。
目次
『書簡選集』より(M・A嬢に)
『書簡選集』より(G・D嬢に)
『書簡選集』より(ある実科学校生徒に)
「子供の心」
「簡略自伝」より
「ただひとり」(詩)
「両親への手紙」
「父への手紙」
『車輪の下』より〔ほか〕
著者等紹介
ヘッセ,ヘルマン[ヘッセ,ヘルマン][Hesse,Hermann]
1877年ドイツ、バーデンヴュルテンベルク州カルフに生まれる。詩人、作家。1946年ノーベル文学賞受賞。1962年スイスにて没
岡田朝雄[オカダアサオ]
1935年東京に生まれる。東洋大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Gotoran
44
”自分を信じて自分らしく”生きたと云うヘルマン・ヘッセ。本書では、ヘッセが少年時代から我が強く、親の手に余る子で、神学校の寄宿舎から脱走して落ちこぼれになるも、ずっと詩人になる夢をあきらめず、独学で大作家になった。自分を信じて生きることの重要性を説いたエッセイと詩を通して、『わがままこそ最高の美徳』を窺い知ることができた。興味深く読むことが出来た。2024/11/17
ゆきえ
22
「ぼくは決して屈服しません」「ぼくは人間です。『一個の人格なのです』」。ずっとこの本を読んで最後に訳者あとがきでこの言葉に再会した時、涙が出た。私も中・高生の頃はこんな風に思っていたなあ、と。こういう純粋でひたむきな気持ちをいつの間にか忘れて、怠惰に身を任せて日々を過ごしているなあ、と。日頃から「人間」という言葉は意識して使っていて、ただ生きているだけでは人間ではない、人間になりたい、人間でありたい、という風に考えていたはずなのに…。この本に出会ってまたいろいろ反省した。大切なことは忘れたくない。2014/01/12
ロビン
16
どこまでも自由で独立不羈の魂をもって、あらゆる権威からの服従の要求に「NO」を言い続けた強靭な詩人ヘルマン・ヘッセ。この世で最も大事な美徳は「わがまま」ー「自分自身であること」「自分の内面の声にのみ従うこと」である、と彼はいう。環境が彼を詩人にしたのか、そうではない。詩人でありたいというヘッセの内面の声は障害や無理解、嘲笑や悪罵をはじき返す強力なものであり、それは「神」からの召命とさえいえるものであった。「天、我が材を生ず。必ず用あり」と確信していた李白と響き合うものを感じる。勇気をもって自分でありたい。2024/10/19
ゆきえ
15
3年ぶり2回目。「ヘッセは、自分の心に忠実に生きることを信条とし」ていた。それが「わがまま」だ。なんか泣きそうになるな。今の自分勝手でふにゃふにゃぎすぎすの自分には痛い。やわらかく、やさしく、あたたかい人間になりたい。自分に厳しくならなければ。病気に甘えていてはいけない。強く、わがままにならなければいけない、と、思った。また読もう。2017/03/09
オフィス助け舟
8
草思社「ヘルマン・ヘッセの本」シリーズ。ヘッセ研究家フォルカー・ミヒェルスがテーマ別に編纂したもので、本書以外にも「地獄は克服できる」「愛することができる人は幸せだ」「人は成熟するにつれて若くなる」などがある。本書では、初期の作風から想起される牧歌的・倫理的なヘッセの穏やかな印象とは違って、中期の「デミアン」「シッダールタ」「荒野のおおかみ」そして最後の「ガラス玉演戯」に至る、自分自身の理想を追求するための孤独を礼賛するような、もう一つのヘッセのおごそかな表情が色濃い。2023/08/20