内容説明
昭和二十年十二月、元首相近衛文麿は巣鴨への出頭を前に自決した。この期に及んで米国の態度が急変し、戦争責任追求の圧力が急激に高まってきた中での自決だった。しかし、その背後には元内大臣木戸幸一とGHQ調査分析課長のE・H・ノーマン、そして都留重人による驚くべき陰諜があった。近衛に開戦責任を負わせ自死させることにより何が隠蔽されたのか。戦後六十年を貫く虚妄の戦争史観がいかにして形成されたかを推理する圧倒的迫力の歴史読み物。
目次
第1章 ミニ戦犯裁判
第2章 対敵諜報局員
第3章 内大臣
第4章 軍令部総長
第5章 深淵
第6章 暗闘
第7章 最終幕
補遺 読者の理解のために
著者等紹介
鳥居民[トリイタミ]
1929年、東京に生まれ、横浜に育つ。日本および中国近現代史研究家。夥しい資料を渉猟し、徹底した調査、考察をもとに独自の史観を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Riopapa
3
近衛文麿という人物のことをあまり知らなかったが、日米開戦を避けようとしたり、早期終戦を図ろうとしていたということは分かった。この人が憲法草案を予定通り作っていたら、国の形も違っていたのかも知れない。2013/08/25
猫草
2
東京裁判の裏にある木戸・ノーマンの策略・近衛の弁護を裏付ける確証に乏しさは残り、筆者の推論が真実にどれほど近いのかは疑問だが、歴史を様々な側面から推理するのは面白い。ノーマンは本当にソ連のスパイだったのかが気になり始めた。2011/03/24
くりりんワイン漬け
1
昭和20年 終戦後彼なりの責任の取り方をおこない、人生の幕を閉じた。 そこまでに至る彼や彼の周囲での動きを詳細に解説をしている書。 木戸幸一を徹底的に糾弾しているがその確からしさが、木戸という人物を良く知らない私には判断がつかない。ただし起こり得る人間の暗さの一面であることは理解できる。2007/03/28
dayoon
0
戦争責任を問われて自死した近衛文麿の死の裏に、内大臣木戸幸一との確執があったという立場からの本。昭和16年の近衛内閣退陣から、東條内閣の誕生、太平洋戦争への突入と、言ってみれば歴史のターニングポイントでの木戸の振る舞いを断罪する。ただ、国家の最高機密に属する事柄について、史料で分かることは限られているから、どうしても推論の域を出ない印象で、説得力も小さくなる。ただ、皆んなが対米戦争を避けたいのに、そのことを言い出せず惨禍を招いたというのは、いささか呆然とする。現代社会おいても、そんな例はたくさんありそう。2018/07/15