出版社内容情報
優しさと打算、愛情と嫉妬が交錯するゆがんだ三角関係が、男の人生を静かに蝕んでゆく――。人間の猥雑さを見事に描出し、文学の力を再認識させる傑作。
内容説明
絵を描くこと、夢想すること、友達を大事にすること、捨て猫と行くあてのない少年を自分の家に連れてきて面倒を見ること―限りなく心優しい同性愛者アンドレは、そうした日々に喜びを見出してきた。穏やかな日常は、一人の青年オレリオの登場によって崩れてゆく。優しさと打算、愛情と憎悪、欲望と奉仕とが交錯する息づまる日々。アンドレと女友達サビーヌ、そしてオレリオの決して均衡のとれない三角関係は、一体どこへ行き着くのか―。人間の猥雑さを見事に描き出した作品。
著者等紹介
トロワイヤ,アンリ[トロワイヤ,アンリ][Troyat,Henri]
1911年モスクワ生まれ。1920年に一家でフランスに亡命。1935年に処女作『仄明り』がポピュリスト賞を、1938年に『蜘蛛』がゴンクール賞を受賞。1959年に異例の若さでアカデミーフランセーズ会員となり、現在に至るまで作品を発表し続けるフランス文学界の重鎮
小笠原豊樹[オガサワラトヨキ]
1932年生まれ。岩田宏の名で、詩、小説、評論多数
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
67
ゲイ・バイ・異性愛による「三竦み」。画家のアンドレは自己名誉心が強く、野心溢れるフレデリック(オレリオ)に惹かれるが、彼はアンドレの女友達であるサビーヌを妊娠させ・・・。正直に言うとアンドレに対しては「優しさ」を勘違いして他者に寄生する人にしか見えなくて・・・。そんなアンドレが「子は鎹」というかのように二人を自分から離れさせないようにする姿は、家庭内で「子は鎹」は嘘っぱちだと言う事を経験してきた私にとって無駄な足掻きにしか思えない。個人的に恋と愛の違いを知っているけど、流されて刹那的に生きるサビーヌが好き2016/10/15
きゅー
10
素人画家のアンドレ、親しい女友達のサビーヌ、偶然出会った高貴な野蛮人オレリオ。彼らの三角関係の物語。読み進めた読者は、精神的に幼い3人だからこそ彼らは気が合い、共同の生活を営んでいたのだろうと、苦渋を感じつつ思い出すことになる。特に物語の結末が嫌な後味として残った。結局は誰も彼も自分の人生恋しさで生きている。どんなに優しい言葉や眼差しを与えてくれても、最終的には人に責任を押し付ける。アンドレは善人かも知れないが、その善さとは幼いまま成長することのなかった少年の善さに思えてならない。2018/05/24
めっちー
1
ゲイの画家がバイに恋をし、バイはストレートの女性と付き合っている。そんな三角関係を表した題名が秀逸である。2021/04/24
みんみん
1
ゲイ、バイ、異性愛者3人にる微妙な関係。アンドレ→オイレオ→←サビーヌという感じ。心優しいアンドレは奔放な二人に振り回されていて、ひとり負けのようで切ない。2020/01/08
勉誠出版営業部
1
アンリ・トロワイヤの『石、紙、鋏』を読了。タイトルは日本で言うところのじゃんけんに当たる言葉を並べたもの。絵描きのゲイの主人公、その女友達、そして主人公が出会った若い青年の3人の三角関係を主に物語が進んでいく。不気味なまでの緊張感が最初から最後まで途切れることがない。2015/06/25