出版社内容情報
妻殺しの罪を着せられた父の冤罪裁判に青春を捧げる娘。果して真実は、父の心境はいかに。巧みな心理描写から生の愚かさを浮彫にする物語巧者の真骨頂。
内容説明
1988年、フィリップ・クレモニエールは妻殺しの罪により15年の禁固刑に処せられた。父の無実を信じる娘マリ‐エレーヌは、冤罪を晴らすため、青春の全てを賭けて司法との闘いに立ち上がる。1996年、ついに再審が開始され、世紀の冤罪裁判に判決が降りた。勝利を手にし、マスコミの寵児となった父と娘。だが父親は沈黙と無気力に沈み、部屋に引きこもる。何が不満なのかといぶかる娘は、弁護士との遅ればせの恋愛に現を忘れ、しだいに父娘の関係は軋み始める―。巧みな心理描写から生の愚かさを浮きぼりにする。物語巧者トロワイヤの真骨頂とも言える秀逸な作品。
著者等紹介
トロワイヤ,アンリ[トロワイヤ,アンリ][Troyat,Henri]
1911年モスクワ生まれ。1920年に一家でフランスに亡命。1935年に処女作『仄明り』がポピュリスト賞を、1938年に『蜘蛛』がゴンクール賞を受賞。1959年に異例の若さでアカデミーフランセーズ会員となり、現在に至るまで作品を発表し続けるフランス文学界の重鎮
小笠原豊樹[オガサワラトヨキ]
1932年生まれ。岩田宏の名で、詩、小説、評論多数
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
22
1988年マリ=エレーヌの父は、妻殺しの罪で投獄された。父の無実を信じるマリ=エレーヌは、再審を請求すべく人生の全てをかけて戦った。そして8年経った今ついに冤罪が晴れて勝利を手にし、マスコミの寵児となった二人の関係は軋み始める。無気力な父に腹立たしさを覚えつつ、父を救い出すという崇高な目的を失った彼女は、新たに熱中する対象を探し始める。やがて彼女は弁護士との恋愛に溺れていくが、ある日全てを覆す衝撃的な事件が起こる。冤罪事件をめぐるこっけいで哀切な父娘の姿を通して人生の悲喜こもごもを描く。2005/12/08
ひらり なつ子@療養中 気持ちは元気
5
主人公の女性が幸せをあえて拒んでいるような生きる姿勢。それだけだと、暗い小説になりそうだが、語り手がそれをちょっととがめるような感じなので、共感しながら読み進めることができる。トロワイヤはこれからも読みたい。2015/06/02
ゆかっぴ
2
いつも目の前のことに一生懸命打ち込むマリ-エレーヌ。なのにことごとく裏切られたような結果につながってしまい、満たされない心情が憐れでもあります。いつか幸せをつかめるといいな。2015/08/16
保山ひャン
1
浮気症の妻を殺した罪で禁錮刑に処せられたフィリップ。父の無実を信じ冤罪だとして再審に情熱を燃やす娘。ジャンヌダルクともシャルロット・コルデともルイーズ・ミシェルとも称された、闘いに全てを注いだ彼女だが、再審に際してタッグを組んだ敏腕弁護士と恋に落ち、風向きが変わってくる。愛おしくも腹立たしい人間のさまが描かれるが、その感情のぶつける先はブーメランでかえってくる。面白い!2017/05/06
ベック
1
物語の切り口が新鮮だ。冤罪裁判の判決が出てから動きはじめる物語なんて、いわばクライマックスが済んでしまってるみたいなものだ。いったい、この後どう話が続いていくのだろうと興味津々だった。2006/09/27