内容説明
ソマリアの砂漠に遊牧民として生まれた少女ディリーは、13歳になったある日、ラクダ5頭と引き替えに老人との結婚が決まったと父に告げられる。無情で苛酷な部族を逃れ、砂漠のただ中に走り出した彼女を、数奇な運命が導いてゆく。メイドとして働いていたロンドンで写真家と出会い、「彼女の瞳には永遠が見える」と惚れこまれてモデルに。逆境の乗り越え、スーパーモデルとして成功をおさめた彼女だが、少女の時にしきたりによって受けた傷が、いまも重くのしかかる…。華麗な転身を遂げた後も、故郷への想いはやみがたく、現在は国連特別大使としても活躍する著者が、ここに真実の半生を語る。
目次
逃走
家畜とともに
遊牧民の暮らし
女になるということ
婚約
モガディシュへの道
親族たち
ロンドンへ
メイドの生活
ようやく手にした自由〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
129
ソマリア遊牧民に生まれ、結婚から逃れるために家出してスーパーモデルになった著者。国内ではラクダと交換される女であり、国外では異邦人である彼女は何処でも境遇が過酷。女子割礼の実態や弊害も衝撃的。それだけに「なんとかなる」で体当たりするバイタリティは並ではない。故郷への想いに渡航・雇用問題といった不条理スパイラルを重ねると"砂漠"が多義的に響いたり。身軽を信条に、仕事も知識も現地調達な遊牧民気質は心身の負荷が大きいモデル業界の順応にも貢献したと思う。数奇な形でも縁と強い意志が合わされば可能性は限りなく広がる。2022/06/09
チェ・ブンブン
28
ソマリアから人生かけて脱出、不法移民としていつ本国送還させられるかの恐怖がヒシヒシと伝わりハラハラしながら読んだ。英語全くわからないのに、入国審査で靴片方なくなる事件は半端ねえな...2014/04/29
草食系
22
ソマリアの遊牧民の少女が、ラクダ5頭と引換えに老人と結婚させられそうになり、砂漠を逃げ出し、一躍スーパーモデルになった、という映画の解説を聞いて興味本意で読みましたが、アフリカ女性の立場が垣間見える本でした。彼女の「それはおかしい、嫌だ」という、それが当たり前の社会に身を置いていては気付けない事柄に向き合う、彼女の「心の声を殺さない」所が素晴らしい。彼女の歩みは、アフリカの大地そのもののように「生きればよし、ここで終わればそうゆうもの」という清々しいくらいに潔く、たくましくて圧倒された。2013/09/15
たまきら
19
「切除されて」を読んでいて(ああ、以前にもこの風習で腹立ったな)とこの本を思い出しました。とにかく、世は美しい女性にヨワイ。私もこの人の写真にどのぐらいうっとりしたか…とにかく多くの人を惑わせる美しさ。…でも、彼女が排尿に数十分かかるほどひどい女性器切除の傷跡になやまされていたとは…。とにかくストレートな描写で、仰天です。この風習何とかならんか、マジで。2016/01/12
ちびあつ
9
アフリカで少女に「割礼」という儀式がなされていることは、おそらくテレビの情報で数十年前から知っていたと思うが、実態をはじめて知った。ショックだった。 ワリスは幸せを自分で力強くつかみ取った、その美しさ(外見という意味ではなく)は本物だと思う。2017/10/13