内容説明
太平洋戦争下、日本は南方の占領地に民政部を置いて統治を行った。これは、海軍の司政官としてアンボンとバリ島で教育改革を行った教育者が内地の知人に送った(送ろうとした)現地からの報告書である。筆者はオランダがインドネシア人に行った愚民政策と、日本が朝鮮と台湾で行った教育の振興政策を比較しているのだが、今日の状況を合わせて考えると興味がつきない。
目次
序信 アンボンの概観と同地における日本人の生活
第2信 南方の教育的現実とその日本的建設(バリ島点描;穴あき銭;文盲の島 ほか)
第3信 南方教育の敵前転回―戦力増強・増産協力への教育(日本化教育体制より決戦教育体制へ;大東亜資質の錬成;学徒訓 ほか)
結信 南方を去らんとするに当たって(バリ史に学ぶもの―南方東洋魂の発見;バリ人諸君に呈する書)
感想・レビュー
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印度 洋一郎
4
第二次大戦中、現在はリゾート地になっている日本占領下のバリ島へ海軍の教育民政官として赴任した教師が、郷里和歌山の教員仲間へ出した膨大な報告書をそのまま掲載している。戦後の回想録とは異なり、戦時下のリアルタイムな文章なので、当時の価値観がそのまま書かれているのが興味深い。兎に角、オランダ統治下で貧弱だった公教育を普及させようと奮闘し、日本式カリキュラム(日本語教育含む)を教えこもうと尽力しているのが伺える。時に「授業の過程で原住民に論理的思考を育むのは危険」等、日本の国策と現地の現場のギャップが見え隠れ2017/07/29
Leonard
1
バリ島は太平洋戦争中の三年間、日本の占領下にあったにもかかわらず、バリ人には親日家が多いというのが不思議に思っていたのですが、この本を読んで謎が解けました。同じインドネシアでも陸軍管轄のスマトラなんかでは日本軍は暴虐の限りを尽くしたということで評判が良くないそうですが、バリは海軍管轄で、軍による統治ではなく文人統治が行われていたようです。日本統治下の3年間で、バリの学校教育は目覚しい改革が行われ、インドネシア語を公用語とする633制の小中高校に組替え、今日のバリの学校教育の基礎を作ったとのことで感謝されて2013/03/17




