内容説明
戦前、戦中、開拓民として、また戦時動員によってサハリン(樺太)に渡り、終戦後も同地にとどまらざるをえなかった韓国人を故郷に帰還させるべく、黙々と運動を続けた日韓夫妻がいた。昭和十八年末、樺太人造石油の労働者募集に応じて渡樺した朴魯学と、戦後朴と結婚した堀江和子である。昭和三十三年、幸運にも日本人妻とその家族の引揚げに加わることができた朴は、その後半生を同胞の帰還運動に捧げ、和子は献身的にこれを支えた。だが、昭和五十年、サハリン残留韓国人帰還のための裁判がはじまると、この問題はにわかに政治的色彩を帯びて、日本の戦争責任、戦後補償問題へと発展してゆき、夫妻の活動は忘れ去られていった。サハリン残留韓国人はなぜ祖国に帰れなかったのか。その責任は本当に日本にあるのか。だれがこれを政治的に利用しようとしたのか。夫妻の足跡をたどり、ことの真相を明らかにした労作。
目次
序章 サハリン韓国人帰還運動とは何か
第1章 樺太
第2章 戦時動員
第3章 サハリン
第4章 引揚げ
第5章 帰還運動
第6章 裁判
第7章 家族再会
第8章 苦い結末
終章 サハリンはいま