内容説明
1990年4月、ジョギング中の男性を車でひき殺して逮捕された麻酔専門医カプラーは、75年に3人の患者を殺そうとし、80年には致死量の麻酔薬を打って患者を心拍停止に陥らせた。85年にも患者の人工呼吸器を故意にはずした疑いで起訴されたが、証拠不十分で棄却された。この間ずっとカプラーは、精神科に通いながら医者を続けていた。“声”に命じられるまま奇行をくり返すカプラーの病状をひた隠しにした妻、異常に気づきながら手を打たなかった病院の同僚たち…。カプラーの生い立ち、事件、そして裁判を追いながら、医師たちの隠された一面、精神鑑定の危うさをあばいてゆく。現代版『ジキル博士とハイド氏』というべき衝撃のノンフィクション。
目次
第1部 事件
第2部 秘められた生いたち
第3部 最後の旅
第4部 結末
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
5〇5
5
裁判の判決は、人格障害で「有罪」か? それとも精神異常で「無罪」か? 被告は、殺人と殺人未遂で起訴された医師だ。著者は被害者の友人であり、医師でジャーナリストでもある。彼が取材を基に書き上げたノンフィクションだ。本書の後半は検事と弁護士の法廷でのやり取りが描かれ、両者の激しい論戦は迫力十分だ。日本の刑法第39条(心神喪失者は罰しない)に関わる内容であり、事件の「なぜ?」をどこまで遡るべきか…考えさせられる一冊だ。😕2024/10/25
犬都歩
4
精神に異常をきたしている医師が犯した殺人・殺人未遂にまつわるノンフィクション。本人はもう正常な判断ができる域を明らかに逸脱してしまっているのに、何も手を打たず野放しにしておいた周囲も含め、暗澹とした気持ちにならざるを得ません。深刻な心の病がどれだけ人間を打ち砕くかを考えれば、私個人としては刑罰を与えるより治療を与えるべきという意見に賛成ですが、カプラーもそうであるように、詐病かどうかは結局は本人にしか分からないという問題点もあるし、恒久的な結論が出ることはなさそう。それにしても表紙が怖い。2022/11/07




